新日鉄住金社長・進藤孝生さん(67)

2017 成長への展望

 ■3つの競争優位 源泉に飛躍

 --昨年は、世界が大きく変わった一年だった

 「堅調な先進国の経済が新興国の景気減速を補い、全体としては緩やかに成長してきた。ただ、英国のEU(欧州連合)離脱やドナルド・トランプ氏の米大統領選当選が象徴するように、所得格差や中間層の疲弊、移民問題といったグローバリズムの矛盾が露呈し始めた。内向きで孤立主義的な傾向が増している」

 --業界にとって逆風となった出来事も多かった

 「個人消費が思っていたほど上向かなかった。消費税再増税が見送られ、駆け込み需要もなかった。熊本地震や円高も予想外だった。一方、1年前は先行きが見通せなかった中国の過剰生産能力問題については、削減に向けた枠組みが整い、対応が進んだ」

 --需要の見通しは

 「世界需要は緩やかながら回復しており、今後も底堅く推移する。中国も自動車販売が堅調で、景気刺激策の後押しもあって、需要そのものは落ちていない。中国が安値輸出していた鋼材が(中国)国内へ戻る中、市況はかなり上向いている」

 --米国を中心に保護主義的な動きが強まり、日本が反ダンピングの対象になるケースも増えている

 「日本から米国への輸出は多くなく、現地で造れない高級鋼を中心に輸出しているので影響は少ない。ただし、(反ダンピング課税で)米国から閉め出された中国や韓国の鋼材が日本に流れ込む可能性はある。このため(流入鋼材への)監視をかなり強めており、不当廉売の事実があれば、しかるべき対応を取る」

 --原料炭の価格が高止まりしている

 「中国政府が炭鉱の操業日数を制限したことが主因となって急騰した。これは構造的な要因だ。コストより安い値段で製品を売っても続かない。製品価格への転嫁を進めなければならない」

 --3月までに日新製鋼を子会社化する計画だ

 「子会社化を機に日新が高炉を1基休止し、代わりに当社が半製品を供給する。これにより日新は投資を抑制でき、新日鉄住金は高炉の稼働率を上げられる。200億円のシナジー効果を想定しているが、十分達成できると思っている」

 --2017年度は中期経営計画の最終年度となる

 「計画策定時と環境が大きく変わったので、売上高営業利益率10%以上などの目標を達成するのは難しい。ただ、『技術力』『コスト競争力』『グローバル対応力』の3つを競争優位の源泉にして、国内と海外を両輪に飛躍を目指すという方針は掲げ続ける」

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【プロフィル】進藤孝生

 しんどう・こうせい 一橋大経卒、ハーバード経営大院修了。1973年新日本製鉄(現新日鉄住金)入社。取締役、副社長などを経て、2014年4月から現職。秋田県出身。