IT業界、人材不足解消へママ育成 学校と提携し講座開設 就職後のケアも

人手不足のIT業界に未経験でも就業意欲の高い人材を送りこもうと、子育て女性や主婦を対象にウェブエンジニアやデザイナーを育成する講座が注目されている。派遣会社とIT系専門学校が事業提携するなど「仕事にする」を重視した体制が特徴だ。スキルを身に付けた主婦層が、人手不足の市場で新たな戦力となる期待がある。
女性の就職支援に特化した派遣会社ビースタイル(東京都新宿区)とIT人材養成学校を運営するデジタルハリウッド(東京都千代田区)は、「主婦・ママクリエーターズオーディション」を17日に都内で開催する。
デジタルハリウッドが設けるデジタルコンテンツ制作の講座「主婦・ママクラス」出身者を、ビースタイルが採用意欲ある企業に紹介する「就職マッチングイベント」だ。受講者は企業向けに作品を発表し、企業は人材をスカウトできる。
両社は、7月に事業提携した。デジタルハリウッド出身のIT人材を就職につなげる「出口戦略」が狙い。主婦向け講座で特徴的なのは、在学中から仕事を受注して経験を積めることだ。
IT教育のインフラトップ(東京都渋谷区)も、今年度から主婦ママコースを開講。未経験でも1カ月でウェブ制作ができる短期集中型が特徴だ。業務委託案件や、女性の採用に積極的な企業への紹介など「受講後も、継続してサポートする体制」(広報担当者)が人気という。
インターネットを通じ仕事を受発注するクラウドソーシングサービスのクラウドワークスは、6月に動画学習サービスのスクー(東京都渋谷区)と事業提携。自社サービス利用者に対し、デザイナーやライター向けオンライン学習カリキュラムの無償提供を始めた。スキルアップして仕事の受注率を上げる狙いだ。
経済産業省の調査によると、昨年時点でIT人材の不足数は17万人に上り、2030年には79万人に達するとの試算もある。産業界で大型のIT関連投資が続くうえ、ビッグデータやIoT(モノのインターネット)サービスの多様化で需要拡大が見込まれるからだ。
インターネットの普及により、在宅で仕事を受注できる環境は整いつつある。ただ、主婦向けの仕事の多くはデータ入力など単価の安い単純作業だ。それでもプログラミングやアプリ開発などIT技術を身に付ければ、受注案件は増えるし単価も格段に上がる。再就職の選択肢も広がる。
IT分野での主婦人材の育成は、人材供給と雇用創出の両面で可能性を広げていきそうだ。(滝川麻衣子)
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■女性向けITスキル講座(企業/業種/講座内容など)
デジタルハリウッド(IT・デジタルコンテンツ専門学校)
3年前に主婦・ママクラスを開設。ウェブデザインやプログラミング教育
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インフラトップ(IT教育)
4月に「ウェブキャンプ」に主婦ママコースを開講。短期集中でウェブ制作
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凛(IT通信教育)
女性に特化したITスキル通信講座「ギークガールラボ」を5年前に開講。ウェブ制作者やエンジニア養成
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クラウドワークス(クラウドソーシングサービス)
6月にオンライン学習カリキュラムをサービス登録者に提供。デザインやITスキル教育
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