MRJ初飛行1年、現地ルポ 米国で開発加速 親日の町は歓迎ムード

 

 三菱航空機(愛知県豊山町)が開発する国産初のジェット旅客機MRJ(三菱リージョナルジェット)の試験機が初飛行してから11日で1年となる。10月に飛行試験を始めた米国を舞台に開発を加速させる方針だ。MRJが飛行試験を始めた米軍の訓練機が飛び交う米西部ワシントン州のグラントカウンティ国際空港は日の丸ジェット到来に、親日の町は歓迎ムードに包まれている。

 「成功へ全面支援」

 西海岸シアトルから車で東に約3時間。空港は人口約2万人の湖畔の町モーゼスレイクにある。5本の滑走路のうち1本は、米国で最長クラスの4116メートル。ここに三菱航空機が設置した拠点が「モーゼスレイク・フライトテスト・センター(MFC)」だ。

 9月末、滑走路に面した広さ約6000平方メートルの格納庫で、試験1号機の周囲に技術者が集まり、エンジン内部をのぞき込んで作業していた。飛行中の通信やデータ解析を担う事務棟も併設する。晴れの日が多い現地では計画が天候に左右される心配が少ない。使える空域も日本より格段に広く、1日に複数回の飛行試験を実施できる。

 心強い味方になるのが、コンサルタント契約を結んだ飛行試験業務の専門会社エアロテックだ。シアトルに本社を置き、ボーイング機の開発に携わってきた実績がある。リー・ヒューマン社長は「MRJの成功のため全面支援する」と語り、従業員300人のうち約7割をMRJに投入する。

 三菱航空機は「最高のパートナー」(MFCの岩佐一志副センター長)の協力を得て経験不足を補う。今後は標高の高いコロラド州の空港や、寒冷地の気候を再現できるフロリダ州の研究施設など、北米各地でさまざまな試験に臨む。

 日本とゆかり

 グラントカウンティ国際空港は2000ヘクタール以上の敷地内に工業団地を抱え、産業の集積地としての顔も持つ。日本から製薬や電子機器の大手が進出しており、MRJによる宣伝効果で日系企業の一段の誘致に期待が高まる。

 「MRJ1号機が鳴り物入りで着陸」。MRJの到着を大きく報じたのは地元の新聞コロンビア・ベイスン・ヘラルド紙。エリック・ラフォンテイン代表は「多くの日本人が町に来れば、住居や食事で経済に貢献してくれる」と指摘した。

 三菱航空機は現地に最大400人を投入する方針だ。空港から車で約10分の幹線道路沿いでは、MRJ関係者の入居を見込み、マンションの建設が進む。飲食店や商店も増えるという。

 モーゼスレイクは日本とゆかりの深い地でもある。戦後に収容所から解放された日系米国人が農業従事者として町に移り住み、今も多くの日系人が暮らす。

 日本航空は1960年代から2009年まで、操縦士の訓練所として空港を利用。地元の小学生を招いて飛行機に乗せるなど地域との交流は活発だった。日系2世のポール・ヒライさん(87)は「三菱の人にも地域の文化に溶け込んでほしい」と笑顔で語った。