競争力維持へ「日の丸海運」結束 運賃低迷、進む寡占化 大手3社、コンテナ船事業統合
商船三井、日本郵船、川崎汽船の海運大手3社が31日、合弁会社を設立して定期コンテナ船事業を統合すると発表した。貨物需要の低迷に加え、新造船増加による競争激化で市況が悪化しているためだ。3社は「対等の精神」で統合し、オールジャパン体制を構築することで、生き残りを図る。
来年7月に新会社
合弁会社への出資比率は日本郵船が38%、川崎汽船と商船三井が31%ずつ。海外のコンテナターミナル事業も含めて統合する。2017年7月に新会社を設立、18年4月にサービスを始める予定。売上高は単純合算で2兆円余りで、16年9月末時点でみた運航隻数の3社合計は256隻。輸送能力で世界6位規模、世界シェアの約7%を占めることになる。
3社は、17年3月期連結決算の最終損益見通しが合計で約3300億円の赤字となるなど厳しい経営環境に置かれている。コスト削減などで年間約1100億円の統合効果を狙う。
3社が同日午前に東京都内で開いた記者会見。事業統合の必要性について、日本郵船の内藤忠顕社長は「この約1年で、世界規模のコンテナ船会社は18社から14社に収斂した。日本の『1社』を強くすることが重要だ」と述べた。
川崎汽船の村上英三社長も「海外の大規模な専業会社と伍(ご)して戦うため規模の拡大が必要だ、と3社の意見が一致した」と説明した。
定期コンテナ船事業の統合は、海洋国家にとっての基幹インフラの浮沈を賭けた「歴史的転換点」(池田潤一郎・商船三井社長)だ。
コンテナ船事業をめぐってはここ数年、世界経済の減速に伴い需給が悪化。指標とされるアジア発北米西岸向け運賃は、ピークだった08年のリーマン・ショック前の半分近い水準に落ち込んだ。世界的な船舶の供給過剰が続くなか、コスト削減に対する荷主の要請は厳しく、運賃競争が加速している。8月末には世界シェア7位だった韓国・韓進海運が破綻に追い込まれた。
このため、海運各社は合従連衡を加速。世界シェア3位の仏CMA CGMがシンガポールのアメリカン・プレジデント・ラインズを買収し、6位の中国遠洋運輸集団と7位の中国海運集団が合併するなど、上位勢による寡占の動きが強まっていた。
国際競争力が課題
長年のライバル関係にある国内大手3社も、国際競争力を維持する上で大同団結が不可欠だと一致し、来春から台湾、韓国、ドイツの同業3社と事業連合を組む計画だ。その協議を通じて「構造不況への見解が一致し、春ごろから統合の話が一気に進んだ」(村上英三・川崎汽船社長)という。
定期運航のコンテナ船は荷主との契約期間が1年程度と短く、他社との差別化も難しい。国内3社は自動車や液化天然ガスの輸送、海洋資源開発などに注力してきた。
BNPパリバ証券の中空麻奈チーフクレジットアナリストは「収益の足かせだったコンテナ船を切り離すのは最善の選択」だと評価。その上で「やはり苦しいばら積み船への対応も急がれる。合弁会社は、狙い通りに価格競争力を高めるための体制を作れるかどうかが課題」と指摘する。
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