“爆買いツアー”から海外ネット販売へ 3兆円規模に近付く「越境通販」が急増中

 

 7月の訪日外国人旅行者は過去最高を更新したが、増加ペースは鈍っており、円高の影響もあって中国人客の「爆買い」にも陰りが出てきた。代わって急増しているのが、中国や米国の消費者がインターネットを通じて日本の商品を購入する「越境通販」だ。経済産業省は2019年に3兆円を突破すると推計、新たな外国人消費の柱に育つと期待している。

 「売れ筋商品が、10万円以上する炊飯器などの家電製品から日用品に変化した」と総合免税店ラオックスの広報担当者は話す。16年6月中間連結決算は、売上高が前年同期より2割強減り、最終損益は赤字に転落した。

 同社は3月、名古屋市に中部地域での初店舗をオープンするなど業容を拡大してきたが、円高進行の影響などで、訪日客の売れ筋は宝飾品や家電から単価の安い日用品に移り、売り上げが縮小してきた。大手百貨店も業績が軒並み悪化し、「訪日客頼み」の限界を露呈している。

 一方、脚光を浴びているのは越境通販だ。経産省は中国の消費者による日本市場での購入額が、16年には既に1兆788億円、19年には2兆3359億円まで増えると推計する。米国からの購入分を加えると、16年は約1兆7000億円、19年は約3兆2000億円に達すると予測。これらは政府が発表する訪日客の消費額には含まれないが、国内企業の業績改善には確実に貢献する。

 「中国の消費パワーで世界を驚かせよう」。昨年11月、中国のネット通販大手「アリババグループ」が展開した特売セールで、最高経営責任者(CEO)の張勇氏はこう呼び掛けた。中国では、ネットの普及や決済システム、物流網の整備で、日本の商品をより購入しやすくなった。

 日本の商品は安全面でも人気が高く、訪日客がネット上でリピーターとなり、口コミで購入者を増やしている。通販にも円高の影響はあるが、旅行費用がかからない分、消費者が商品に充てるお金は増やせる。

 これを商機とみるのは、国内の運輸大手だ。日本通運はアリババと提携し、日本企業の商品を空輸するサービスを始めた。ヤマトホールディングスも今春、別のネット通販大手と提携。ANAホールディングスは9月から越境通販事業に本格参入する。

 ただ、中国の通関制度が事業拡大の壁になっている。各社は通関手続きを代行するが、中国政府が徴税強化のために新たな申告システムを導入し、企業側の負担は増した。運輸大手の担当者は「中国の頻繁な制度変更に対応できないと、サービス自体が成立しなくなる」と警戒している。