英EU離脱で円高警戒、経営に重荷 欧州テロも懸念
121社調査英国の欧州連合(EU)離脱決定は世界経済に大きな動揺をもたらした。欧州で相次いだテロやトルコでのクーデター未遂といった地政学リスクの高まりも、企業活動の足かせになりかねない。主要企業121社を対象に実施したアンケートで、英EU離脱決定や地政学リスクが自社のビジネスに与える影響を上位2つで聞いたところ、「為替変動リスク」を挙げた企業が69社に上り、全回答企業の6割近くが円高など為替相場の行方に神経をとがらせていることが分かった。
主な回答では為替変動リスクのほか、「株価下落」が20社、「売り上げ(資金需要など含む)の減少」が13社に上った。「その他」は31社で、影響「なし」という企業も23社あった。
「英EU離脱決定は極めて残念。リスク回避ムードの高まりから、安全資産である円買いの動きが強まる懸念があり、今後の影響を注視する」(鉄鋼)。英国民投票でのEU離脱派勝利が伝わった6月24日の東京市場では円相場が一時1ドル=99円00銭に急騰し、約2年7カ月ぶりに1ドル=100円を突破。その後も円高基調は続いており、企業業績には大きな重荷となる。
また、英EU離脱決定を受けた対応策としては53社が「情報収集態勢の強化」を挙げ、最も多かった。金融機関は、EU域内で設けられている「単一パスポート」制度の扱いへの関心が高く、情報収集の内容では「単一パスポートを失った場合の影響や対応策」(証券)との回答があった。
フランスのトラック暴走や教会襲撃など欧州大陸各国で相次いだテロも企業に不安を与えている。ビジネスや観光を目的とする人の流れが停滞すれば「日本人の海外旅行の鈍化」(旅行)や「欧州路線の減収」(航空)が懸念されるためだ。クーデター未遂に伴う政情不安が広がるトルコをめぐっても、「出張の一部制限を実施」(自動車)などで影響が及んでいる。
一方、世界経済の懸念材料については、地理的に近く経済的な結びつきが強い「中国経済のハードランディング(急激な悪化)」が40%を占めた。英EU離脱決定などを受けた「欧州の景気悪化」は20%だった。
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