孫正義社長、買収額に「たかが3兆円だ」 未知の領域、先見か無謀か
ソフトバンクグループが約3兆3000億円という巨費を投じて、異業種ともいえるアーム・ホールディングスの買収に踏み切ったことに対して、19日の東京市場では評価する声とともに、財務面や先行きを懸念する見方も出た。先見の明にたけた買収となるのか、無謀な高値づかみとなるのか、最大の勝負に出た孫正義社長の経営手腕に、市場の注目度は高まるばかりだ。
孫社長は18日の会見で、買収額について「たかが3兆円だ」とまったく意に介さず、「ソフトバンクとアームは、最大のパラダイムシフトになるIoTに挑戦する」と、その意義を強調した。
野村証券の増野大作アナリストは「IoT時代を迎え、各種デバイスに組み込まれるアーム設計の半導体の拡大が見込まれる点で、長期戦略としては理にかなっている」と評価。しかし一方で、「ソフトバンクが支払うアームの1株当たり870円に達するプレミアムは、株価のマイナス材料になりうる」と話した。19日のソフトバンクの株価は買収発表前の前週末比で10%超下落した。
アームがライセンスを持つ半導体チップは年間約150億個出荷され、全世界のスマートフォンのほとんどに使われている。孫社長は、自動車や家電などもネットにつながるようになることで「これが何十倍、何百倍にも増える」と将来性の高さを訴えた。
孫社長は、これまで携帯電話のインターネットの発展を見込んで2006年にボーダフォン日本法人を約2兆円で買収するなど、将来性をにらんで果敢に投資してきた。それまでの事業との相乗効果に疑問を持たれたことも多かったが、事業規模の拡大を成功させてきた。
ただ、半導体関連事業は未知の領域で、グループの中核事業としてどうマネジメントしていくのかは未知数だ。13年に2兆円弱で買収した米スプリントの経営には苦戦を強いられ、12兆円という有利子負債も重くのしかかる。
孫社長が“将来への期待”を示し続けることができなければ、一気に市場から見放される可能性もある。
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