LNG事業の海外シフト加速、資源安ショックでてこ入れ
三菱商事と三井物産が液化天然ガス(LNG)事業で販売部門をシンガポールの子会社に移管するなど、海外販売を中心とする事業モデルへの変革に乗り出したことが6日、分かった。新興国にLNGの輸入基地などを建設し、需要創出も図る。LNGの国内需要は減少傾向にあるが、海外では輸入国が増えており、成長する新興国需要を取り込むことで資源事業の不振脱却につなげる狙いだ。
シンガポールには石油・ガス関連の貿易情報が集積しており、三菱商事は2年前に同国にLNG販売会社を設立した。今年4月には現地スタッフも含めて人員を前年比倍以上の20人に増やし、東京本社からLNGの販売部門を移管。2020年にも50人規模に増強する。
三井物産も4月からシンガポールの石油販売子会社でLNGの取り扱いを始め、2年以内に本社から社員を5~6人派遣する。LNG取引は従来、長期契約が中心だったが、近年は短期のスポット契約などに多様化。両社ともシンガポールを起点に周辺国の同契約の入札情報を収集し、経済成長でLNGの需要が拡大するパキスタンなどでの販売増を目指す。将来的には、中東市場の開拓も視野に入れる。
また、三井物産の安部慎太郎副社長は「販売強化と両輪で新興国のガスインフラシステムの構築にも乗り出す」と明らかにした。具体的には、新興国で輸入基地のほか、ガス火力発電所、ガスを国内に配給するパイプラインなどのインフラ構築に取り組み、LNGの需要創出を図る方針だ。
LNG販売はこれまで国内販売が中心だったが、国内需要は原発の再稼働などで先細りが避けられそうにない。国内の電力やガス市場自由化により、電力、ガス会社も自ら調達や権益確保に動いている。三菱商事の平野肇常務執行役員は「余剰分を伸びる海外に転売するなど機動的に需給調整する工夫で顧客のニーズに対応したい」としている。
一方、LNGの世界需要は20年には14年比40%増の3億5千万トンに拡大する見通し。船を改造した浮体式の貯蔵・再ガス化装置の導入で安価な輸入が可能になり、昨年パキスタンやエジプト、ヨルダンが輸入を開始した。インドネシアやマレーシア、中南米も輸入が増える見込みだ。
三菱商事と三井物産は今年3月期に資源安に伴う減損損失計上で初の最終赤字に転落しており、立て直しが急務となっている。
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