古舘伊知郎さんインタビュー 「産経は本当に悪く書いてくれたけど…」
フリーアナウンサーの古舘伊知郎さん(61)がテレビ朝日系報道番組「報道ステーション」キャスター降板後、初めて産経新聞のインタビューに応じた。時に賛否が分かれ、ハプニングもあった12年間の番組出演を振り返り、「偏っていることを恐れてはいけないと思ってやってきた。つるんつるんの偏っていない番組ほど面白くないものはない」などと思いを語った。(三品貴志)
古舘さんは「世の中のからくりの一端が見えたことが財産」と手応えをにじませる。同時に、日々の新しい事象に翻弄され、ニュースを分かりやすく掘り下げられなかったとして、「僕はニュースという化け物に負けたんです」と、独特の表現で振り返った。
また、「12年間、(視聴者から)『ただニュースを淡々とやれ』『お前の意見はいらない』と言われ続けた。意見をちょっと言って引っ込めたり、引っ込め過ぎだと思って言ったりすることへの疲れもあった」「僕は臆病な亀でした」と、冗談交じりに明かした。
その上で、印象に残る放送として、3月の東京電力福島第1原発事故と甲状腺がんの因果関係をめぐる報道と、独ワイマール憲法とナチスを引き合いに出して自民党の改憲草案に懸念を示した特集を挙げ、「最後の方はやりたいことをやろうと思った」と告白。「ただニュースを垂れ流すだけではいけない」と訴えた。
一方、報道をめぐっては「政権は何も圧力をかけていない」としつつ、「間違った放送で番組がつぶれるのが怖いから無難にやろうという自主規制がある。その悪魔と戦わなければいけない」と強調した。
安保法制をめぐり、反対意見の報道に大半の時間を割いたことなど番組内容を批判的に報じた産経新聞に対し、「産経新聞は僕のことを本当に悪く書いてくれたけど、悪く書かれることは“おいしい”。見てもらっている証左だから。仕事は文句を言われてなんぼ」と語る場面もあった。
今後については、「2020年東京五輪の開会式の実況や(4度目の)NHK紅白歌合戦の司会など、いろいろ夢想はします」と語り、エンターテインメント分野を中心に活動していく考えを示した。「報道のど真ん中はもうやらないし、やれない」としつつ、「いつか、ニュースのサイドストーリーを扱ったような新しい番組をやりたい」とも語った。
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