電力自由化1週間、契約切り替え53万件 ガスとのセット割人気

 
電力自由化がスタートして1週間。新規事業者への切り替えはゆっくりと進みそうだ

 電気の購入先を自由に選べる電力小売りの全面自由化が始まり、8日で1週間が経過した。都市ガスや石油元売りといった新規参入事業者は、割安な料金や多様なサービスの売り込みに力を入れ、契約を切り替えた家庭は全国で約53万件(1日時点)に達した。まだ総契約数の1%未満に過ぎないが、今後も増えることが確実で、販売を独占してきた大手電力からの移行がじわりと進む。

 「営業担当者が誠実な対応をしてくれた」

 都内で理髪店を営む60代の男性は、東京ガスと契約した理由をこう説明する。

 新規の契約獲得で先行したのは大手の都市ガスだ。グループのガス器具販売店を中心に積極的な営業活動を展開し、ガスとのセット割引が人気だ。

 契約件数は東京ガスが24万件超(4日時点)、大阪ガスは11万件超(7日時点)に達し、首都圏と関西の新規事業者の中で、それぞれ最も多くの契約を獲得。自由化が始まった4月以降も「契約数は上がっている」(大ガスの本荘武宏社長)という。

 首都圏で東ガスの次に契約を獲得しているのが石油元売りのJXエネルギー。ガソリンスタンドでなじみのある「ENEOS」ブランドを前面に出し、テレビCMなどを使った積極的な営業活動が奏功。これまでに約10万件の契約を獲得した。

 電力広域的運営推進機関は8日、1日時点で新規事業者に契約を切り替えた世帯は、53万2600件に達したと発表した。3月25日時点と比べ約15万件増え、4月以降も増加している。

 ただ、切り替えた世帯は、需要が大きく新規事業者の多い首都圏と関西で約9割を占める。沖縄で契約を切り替えたのはゼロで、中国電力管内でも500件と、地方では自由化の恩恵が届きにくい。

 全国でも切り替えた世帯は総契約数(6260万件)の約0.9%にとどまり、本格的な切り替えはこれからだ。「価格差がない」「料金プランが複雑化して選べない」といった理由で様子見する家庭も多く、新規事業者への切り替えは「ゆっくりと上がっていく」(電力中央研究所の丸山真弘上席研究員)とみられる。