「なんで息子が…」セブンのカリスマ突然退場 創業者・伊藤氏との暗闘も

 
記者会見で辞意を表明したセブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長兼最高経営責任者(CEO)=7日午後、東京都中央区

 セブン-イレブン・ジャパンの井阪隆一社長を退任させる人事案の否決は、セブン&アイグループのトップに君臨してきたカリスマの突然の退場に発展した。

 「(後継者として)なんで息子が出てくるのか。考えたことはないが、うわさされるのは不徳のいたすところだ」

 7日記者会見した鈴木敏文会長は改めて次男でセブン&アイ取締役を務める康弘氏への世襲について強い口調で否定した。

 井阪社長の退任をめぐり、米サード・ポイントはトップの世襲への強い警戒感を表明。3月下旬から行われていた指名・報酬委員会でも井阪氏の退任は異論が出ていたが、取締役会の人事案に対する評価も、鈴木氏の意向に沿った賛成票が7票にとどまる厳しい結果だった。

 セブン&アイ・ホールディングスの社外取締役は4人。取締役の入れた票数は、鈴木氏が主導した会社側の人事提案に、身内である社内取締役の一部からも“ノー”が突きつけられたことを示す。鈴木氏も、この結果は意外だったようで「社内役員から反対が出るようでは私が信任されていないということだ」と述べ、辞任を判断するきっかけとなったと認めた。

 今回の人事案には、これまで円満な関係を築いてきた伊藤雅俊名誉会長と鈴木氏の間のすれ違いも垣間見えた。

 記者会見に同席したセブン&アイの村田紀敏社長は「(イトーヨーカ堂創業者の)伊藤名誉会長から人事案に判子をもらえなかった」と説明。創業家で大株主の伊藤家の同意が得られなかったことが取締役会の判断に影響を与えた可能性を示唆した。人事案について、鈴木氏と伊藤氏が解決のため直接会談した形跡はなく、鈴木氏は、同意が得られなかったことについて「世代替わりがあった」と述べるにとどめた。

 鈴木氏は、井阪氏を社長に登用するにあたって、任期は7年と考えていたと主張。井阪氏の交代は既定路線だったとも強調したが、会見では「最高益を続けた社長が辞めるのは世間の常識が許さないということでしょう」とも漏らし、自らの考えが受け入れられなかった悔しさをわずかににじませた。