大株主が世襲批判、企業統治が機能 セブン&アイの会社案否決

 

 セブン&アイ・ホールディングスの取締役会が会社側提案の人事案を否決したことは、コーポレートガバナンス(企業統治)が機能したことを示した形だ。人事案に社外取締役らが反対したのは、株主から委任されて経営にあたるという、会社法上の取締役の責任を果たす必要があると判断したからだ。

 焦点は、コンビニエンスストア事業を担う中核子会社、セブン-イレブン・ジャパンの社長就任7年を迎える井阪隆一氏の交代だった。会社側は古屋一樹副社長への交代を提案した。この交代については、セブン&アイの大株主で米ヘッジファンドのサード・ポイントが鈴木氏の次男でセブン&アイ取締役の康弘氏を将来のトップにするための「縁故主義に基づく行動」と批判。各取締役に「透明性を持って慎重に行動するよう」に求める書簡を送っていた。

 セブン&アイのトップを長年担ってきた鈴木氏は、商品化の前に必ず自社商品を試食するなど現場に精通する半面、成果が上がっていない部署には容赦ない叱責をすることもしばしばあったという。

 鈴木氏の方針に反対を唱えられる空気は乏しく、人事案についても社内取締役の反対はないと考えていた面があったとみられる。

 だが、経営の透明性を求める社会的な機運は高まっており、上場企業の取締役であれば株主代表訴訟などのリスクにさらされる可能性もある。大株主が異論を唱える中、株主への説明責任を果たせない内容には、強力なカリスマ経営者の方針であっても、容易には賛成できない。

 今回の人事案をめぐる混乱について、立教大大学院の亀川雅人教授は「外国人投資家ら株主に説明責任を果たせるかという点で、むしろガバナンスが効いた結果といえる」と指摘する。(永田岳彦)