自動運転、開発競争加速…事故防止や渋滞緩和に期待 法整備など課題も
トヨタ自動車は6日、高速道路の入り口から出口までドライバーの操作なしで走行する自動運転車を公開し、2020年をめどに市販する方針を明らかにした。ドライバーは高速での車線変更や追い越しを車に委ねることができる。自動運転車については、政府も普及を後押ししており、業界最大手のトヨタが実用化に踏み切ることで開発競争が加速しそうだ。
開発に各社しのぎ
公開した実験車は、周囲を認識するレーダーなどのセンサーや人工知能(AI)、高精度の地図ソフトを搭載。ETCの料金所から次の料金所まで自動走行できる。
トヨタは同様の機能を備えた車を20年に国内向けに発売する方針。当初はシステムなどのコストがかかるため、高級車が対象になる見込みだ。
市販に向け、高温・多湿の過酷な環境でも長期にわたって正常に作動する部品の耐久性強化などにも取り組む。
この日の発表会で、吉田守孝専務役員は「自動運転は車の概念を変える可能性がある。安全や利便性という本質的な機能に関係しており、自動車メーカーとして主体的に関わっていく」と強調した。
トヨタはこれまで運転手を必要としない無人運転には消極的とみられていたが、吉田専務役員は「高齢者やハンディキャップのある方にも移動の自由を提供したい」と述べ、より高度な自動運転技術の開発を進める考えを示した。
自動運転車をめぐっては、他メーカーも開発にしのぎを削る。日産自動車は16年に渋滞時の高速を、20年に混雑した市街地を走行できる技術を搭載した車両を投入する方針だ。海外勢でも、独アウディが17年に渋滞時の高速を走行する自動運転車を市販する。情報処理などを得意とする米IT企業の参入も相次いでいる。
法整備など必要
自動運転では交通状況を把握して最適な判断を下すAIや、車両の位置を確認する高精度な地図ソフトが欠かせない。トヨタはAIの研究を強化するため米マサチューセッツ工科大などと協力。アウディやBMWなどドイツ勢は、共同でフィンランドのノキアのデジタル地図事業を買収することを決めた。外部の技術を活用する動きも進んでいる。
乗り越えるべき課題は少なくない。どんな環境でも正常に作動する精度に加え、車のハッキング対策などセキュリティー強化は不可欠だ。現在は事故が起きた場合は運転手の責任になるが、完全な無人運転が実現すれば法整備なども必要になる。
自動運転車に寄せる期待は大きい。居眠りなど人間のミスによる事故の防止や渋滞緩和のほか、過疎地域や高齢者などの新たな移動手段にもなる。AIは車だけでなく、ロボット技術などへの活用も考えられる。
このため、政府も国家戦略特区プロジェクトとして神奈川県での自動運転タクシーの実証実験などに乗り出し、今月4日には安倍晋三首相が20年東京五輪までの自動運転車の実用化を表明した。官民一体で自動運転の開発を進め、日本の産業競争力強化につなげる。(田村龍彦)
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