口腔ケア製品で障害者雇用を創出 トライフ・手島大輔社長
優れた抗菌性と安全性を兼ね備えた世界初の口腔(こうこう)ケア製品が注目を集めている。この革新的な製品「オーラルピース」で事業展開しているのはバイオベンチャーと社会起業家の2つの顔を持つ手島大輔トライフ社長。この事業を通じて障害者の仕事創出にも取り組んでいる。今年2月には中小企業基盤整備機構主催の「ジャパンベンチャーアワード2015」で最高位の「経済産業大臣賞」を受賞した。
--口の中を清潔にする口腔ケア市場が拡大している
「口腔ケアは健康維持につながると注目されている。口腔内トラブルに悩む高齢者、障害者は増えているからだ。国内市場規模は約1200億円で年率3%の成長が見込める。しかし従来製品は、化学原料のため殺菌効果があっても誤飲すると危険だったり、天然原料のため誤飲による人体への影響がなくても瞬時の殺菌効果がなかったりした。オーラルピースは世界で初めて抗菌効果がありながら飲み込んでも大丈夫な100%天然原料のオーガニック製品だ」
--高い抗菌効果と安全性を両立できた理由は
「口腔内のトラブルの原因となる虫歯菌・歯周病菌・誤嚥(えん)性肺炎原因菌への優れた殺菌効果がある『ネオナイシン』を配合したからだ。これは、おからに住む植物性乳酸菌がつくるペプチド(タンパク質)『ナイシンA』と梅エキスを組み合わせてつくる。瞬時に菌に穴を開けて殺菌しながら、誤飲しても体内消化酵素で速やかにアミノ酸として分解されるので安心だ」
--ターゲットは
「誤嚥・誤飲してしまいがちな高齢者、病気や障害などにより自分で口腔ケアが難しい人、乳幼児や化学製品過敏症の人も使ってほしい」
--新製品も登場した
「ミントフレーバーの『スカイミント』、ユズやオレンジの甘く優しい味で低刺激な『サンシャインオレンジ』を4月10日に発売。アウトドア・スポーツ愛好家や女性、子供も新たな需要層として訴求していく。9月にはペット用も売り出す」
--障害者の仕事も生み出している
「働く障害者の工賃は安く、継続して収入を増やしていくことは難しい。そこで障害者の仕事づくりに取り組んだ。社会的に価値があり競争力も高い製品を開発できたので、継続的に仕事を提供できる。全国の障害者施設を販売代理店にして地元の高齢者などに製品を届けるビジネスモデルを創りだした」
--今後の展開は
「今年3月にドイツ・ニュルンベルクで開かれた欧州最大の介護製品見本市に出展、高い評価を得た。国際的なオーガニック認証機関であるネイトゥルー認証を4月に取得、これを機に今秋にも欧米に進出する予定。今期の売り上げは1億円を見込むが、ネオナイシンを使った新市場参入や他分野企業との提携などで10年後には100億円の売り上げを目指す」(松岡健夫)
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【プロフィル】手島大輔
てしま・だいすけ 明治大法卒。1993年内田洋行入社、トーマツコンサルティング(現デロイト・トーマツコンサルティング)、イデアインターナショナルを経て、2006年トライフ設立し社長。45歳。東京都出身。
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【会社概要】トライフ
▽本社=横浜市中区北仲通3-33 関内フューチャーセンター
▽設立=2006年8月
▽社員=3人
▽事業内容=乳酸菌が作り出す抗菌ペプチドを活用した医療用製品の開発と市場展開
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