「民間の論理ではあり得ない」スカイマーク社長、国交省の意向に逆らえず ANA支援要請は苦渋の譲歩
スカイマークが全日本空輸にも業務提携を要請するのは、日本航空による単独支援に難色を示す国土交通省の意向を前に「譲歩」(西久保慎一社長)せざるを得なくなったためだ。航空大手2社に支援を仰ぐ形となり、西久保社長は「競争バランスを整えるため、全日空とも話をする。普通なら2社に共同運航してくださいなんて、民間企業の論理ではありえない。説明のしようがない」と苦渋の表情を浮かべた。
国交省は、全日空や日航に続く「空の第三極」を育て、業界全体の運賃引き下げやサービス向上につなげることを目指してきた。しかし、スカイマークと同じ新興勢力のエア・ドゥやスカイネットアジア航空、スターフライヤーは今や、全日空を傘下に持つANAホールディングス(HD)から出資や人材派遣を受けるなど、その影響下にある。国交省にとって、最後の砦といえるスカイマークの存続は、何としても守らなければならない一線だ。
一方、平成22年に経営破綻した日航は民主党政権下で公的資金の注入を受けるなど手厚い支援を受け再生した経緯がある。ANAHDや自民党議員の一部からは「競争環境をゆがめている」との批判が根強い。
そこで、日航単独ではなく、全日空も加わった大手2社が提携を通じてスカイマークを支援すれば「競争環境をめぐる問題は減る」(国交省幹部)。また、増収策を得るスカイマークには独立経営の維持に寄与する。現実的な落としどころを探った格好といえる。
提携の柱となる共同運航の詳細は今後の交渉に委ねられるが、路線や便の調整はただでさえ利害が衝突しやすい。全日空と日航は互いに強烈なライバル意識を持つだけに、簡単に空の“呉越同舟”は実現しないだろう。(森田晶宏)