政府・与党は農協法改正案の提出に向けた議論を20日から本格化させる。焦点となるのは、全国農業協同組合中央会(JA全中)が持つ全国の地域農協への一律的な指導・監査権限だ。政府は権限廃止が地域農協の創意工夫を引き出すと主張するが、佐賀県知事選で与党推薦候補が農協団体の支援候補に敗れたこともあり、与党内では慎重論も根強い。安倍晋三政権が「岩盤規制」を打破できるか正念場を迎えることになる。
自民党は20日から、公明党は21日から農協改革を検討する作業チームの会合を開く。23日までの予定だが、協議の経過によっては延長の可能性もある。会合では、JA全中からもヒアリングを行い、2月上旬に農協法改正案の骨格をまとめる。政府はこれを踏まえ3月中に改正案を通常国会に提出する方針だ。
JA全中は1万以上あった地域農協の統括のため農協法に基づく組織として1954年に設置された。地域農協への経営指導や業務・会計監査の権限が与えられ、地域農協を約700に統廃合した経緯がある。
安倍政権はJA全中の一律的な指導や監査が各農協の自由な運営を損なってきたと問題視。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の合意を見据え、国内農業の競争力強化のためにもJA全中の権限廃止が必要との判断に傾いた。
この政府方針にJA側は真っ向から対立。昨年11月に政府に提出した自己改革案では「監査権限」の維持を主張。JA全中の万歳章会長は今月15日の会見で「監査廃止が農業所得の増大にどういった関連があるのか」と対決姿勢を鮮明にしている。