世界文化遺産の登録を行うユネスコ本部がある仏・パリでは、2~4月にかけ、皇后さまが歴代皇后から引き継がれている養蚕を紹介する「蚕-皇室のご養蚕と古代裂(こだいぎれ)、日仏絹の交流」展が開かれた。皇室に伝わる養蚕の展覧会が海外で開かれるのは初めてで、文化庁関係者は「6月のユネスコ世界遺産委員会で、富岡製糸場と絹産業遺産群が正式に登録される追い風になれば」と期待する。
展覧会は今月5日まで「パリ日本文化会館」で開かれ、宮内庁と文化庁などが主催した。皇后さまが昨年に行われた作業の様子を写真や映像で紹介し、秋篠宮ご夫妻の長男、悠仁(ひさひと)さまが宮中祭祀(さいし)で着用された白絹の産着など50点以上が展示された。
皇室の養蚕は、明治天皇の皇后、昭憲皇太后が国の基幹産業だった養蚕を奨励しようと始めたもの。天皇、皇后両陛下は平成23年8月に「富岡製糸場」を視察し、世界遺産登録にも高い関心を持たれている。
展覧会の開催は、偶然にも、ユネスコの諮問機関イコモスがパリで登録の事前審査をしている期間と重なった。文化庁幹部は「イコモスは学術的に審査するので勧告への影響はない」としつつも、「ユネスコ世界遺産委員会の関係者には、PRになったのでは」と期待している。