国鉄の分割・民営化から今年で30年を迎える。旅客6社と貨物1社に分け、地域の実情に合わせた“民間の知恵”による活性化が狙いだった。スリム化と多角化で国鉄時代にはできなかった事業をいくつも実現。一方で廃線も進み、鉄道をめぐる風景が一変した地域もある。昨年10月、JR九州は念願の上場を果たしたが、11月にはJR北海道が現行路線のほぼ半分について「単独では維持困難」と表明し明暗を分けた。(池田証志、市岡豊大)
「バケツに穴が開いたような状態」。JR北海道の島田修社長は昨年11月の記者会見で赤字構造をこう例えた。「このままの状況が続けば会社が立ちゆかなくなる」(同社広報)として10路線13区間でのバス転換などについて沿線自治体と協議する方針を示した。
この中には、故高倉健さん主演の映画「鉄道員(ぽっぽや)」のロケ地となった幾寅駅(南富良野町)がある根室線富良野-新得も含まれた。
「廃線の結果、衰退した町をたくさんみてきた」。留萌線深川-留萌が13区間の一つとなり、危機感を募らせるのは、北海道深川市の担当者。「経営が難しくなったからといってポンポンと(路線を)切るのは拙速だ」と訴える。もっとも、同区間は「1列車当たりの平均乗車人員が11人」(同社)しかいない。
「本当に長い道のりだった。上場はゴールではなく、新たなステージでの出発点だ」。JR九州の青柳俊彦社長は上場後の会見で、経営難が予想された「3島会社」(北海道、四国、九州)でいち早く上場を果たした気概を語った。豪華列車「ななつ星」の運行など鉄道事業で元気を見せただけでなく、不動産など多角化で収益を上げた。