「デフレの申し子」といわれてきた牛丼チェーン店の激しい値下げ競争は、「勝者なき消耗戦」に終わったようだ。ゼンショーホールディングス(HD)が展開する最大手の「すき家」と吉野家ホールディングス(HD)の「吉野家」、松屋フーズの「松屋」の大手3社の既存店ベースの売上高はそろって前年割れが続いている。離れてしまった客を呼び戻そうと、各社はメニュー開発やキャンペーンなど新戦略に知恵を絞るが、決め手がなく、出口が見いだせない。外食産業に旋風を巻き起こしてきた牛丼チェーンはいま、岐路に立たされている。
「商品を変えずに値段を下げれば、一時的なシェア争いはできるかもしれないが、持続可能な成長市場をつくることはできない」。日本マクドナルドの原田泳幸CEO(最高経営責任者)は、牛丼店の値下げ競争を切り捨てる。
同社は、2000年代初めに巻き起こったファストフードの値下げ競争をリードし、「59円バーガー」などで話題を集めた。しかし、「ハンバーガー=安物」のイメージが定着し、売上高の大幅ダウンを招いた苦い経験がある。
その後、経営を引き継いだ原田CEOは「不毛な値下げ競争」とは距離を置いた。低価格の商品で集客する一方で、高付加価値のハンバーガーで収益を稼ぐ複合的な価格戦略に転換し、業績のV字回復を果たした。その後も、新規顧客の開拓、既存客の来店頻度の向上など、次々と手を打っている。