無印良品が実際に3兆円を「分解」してみたら…
無印良品としては、この3兆円という困難をどのように分解して達成するのでしょうか。同社が発表した中期経営計画を見ていきます。
▼店舗増
店舗数は国内外で1000店舗ほどである現状を2500店舗にするという計算だそうです。単純にここで売り上げは2.5倍ですね。「店舗増」は比較的考えやすい策ですね。借り入れに頼るかもしれませんが、店長をはじめとする運営人材の育成とセットでこれまでの方針をスピードアップしていけば良いのです。
▼店舗の成長
さらに「2%ずつ既存店舗を成長させる」ということです。「2%」アップはあっさりと書いてありますが、小売業界としては非常に難しい目標であり、かつ売り上げ6倍に向けて鍵になる数値です。具体的にどのような策があるのかはわかりませんが、注目でしょう。今回の計画の中で実は一番インパクトが大きい部分のはずです。2%ずつ成長させると9年でどれくらい増えるのか、みなさんも電卓を弾いてみてください。
▼食品を伸ばす
もう1つ注目すべき「分解」は食品への注力です。現在の無印良品は生活雑貨が支えている(30%ほど)と言えますが、食品を伸ばし30%ほどにするという考えです。衣類はユニクロ、生活雑貨はニトリなど競合がひしめく中、売り上げ3兆円を実現するにはユニクロ、ニトリ並みに「無印の食品」が家庭内に広まらなくてはなりません。
なんせ3兆円の売り上げの30%を食品が支えるとなると9000億円です。山崎製パンが1兆円ほどの売り上げですから、国民ほとんどが身近に感じて手に取っている状態が必要です。銀座には無印良品の巨大な旗艦店のような店舗があり、1階はすべて食品です。場所柄か、なんとなくオシャレでちょっと高い無印良品のパッケージの食品・お菓子やデリなどが販売されていますが、そのレベルでは到底到達できない金額です。
ここまで分解してみると、「無印良品の食品」としては、山崎製パンのような
低価格で認知度も抜群に高く、どこのお店でも手に入る
というラインを出していくことが必須となることが皆さんもお分かりになるのではないでしょうか。
無印良品のHPでは、「素材を生かした、ブラウンマサラ一人前350円」がレトルトカレーのトップに来ていますが、「150円の美味しいチキンカレー」で一気にシェアを取るくらいの規模が必要です。良品計画の担当の方々は全く新しい戦いを始めているのではないでしょうか。
「3兆円」は対外的に目立つための数字だけなのか、それとも服のユニクロ、家具のニトリのような「ライフ」を支えるブランドの誕生になるのか。これから良品計画が打ち出してくるであろう様々な策を、みなさんも期待して、分析しながらウォッチしてみてください。
【今日から使えるロジカルシンキング】は子供向けにロジカルシンキングのスキルを身につける講座やワークショップを開講する学習塾「ロジム」の塾長・苅野進さんがビジネスパーソンのみなさんにロジカルシンキングの基本を伝える連載です。アーカイブはこちら