当たり前のことを、当たり前にやりきる
2008年にNHKで『B'z メガヒットの秘密~20年目のB'z~』というドキュメンタリーが放送された。私も見た。何度も見た。合宿リハーサル、レコーディングなどに密着した映像だった。そこにはメンバーの過剰なまでにストイックな姿が描かれていた。
ボーカルの稲葉浩志は過剰なまでにコンディションにこだわっている。合宿中もランニングを欠かさない。控室は、廊下からエアコンの冷気が入ってこないようにするためにも、温度や湿度を保つためにも、ドアの隙間を目貼りする。エアコンはつけない。何台もの加湿器がおかれ、吸入器まで活用する。ここまでして喉のコンディションを保っていた。
ギターの松本孝弘も、合宿リハーサルでオフの日に、宿泊先で1日中ギターを練習する。トップギタリストがカップヌードル1杯で1日中練習する様子は圧巻だった。
レコーディングにおいても、歌詞の言い回しの一言や、ギターソロの最後の2小節を何度も検討する。そのために、何度も録音し直す。
成果を出すために、基礎を大切にする、とことんこだわる姿勢に胸を打たれた。彼らは天才というより、努力家のように思えた。
日本企業においては、働きすぎが問題となっている。過剰なまでの品質にこだわるのもまた問題だ。ただ、プロとして安定した品質を目指すこと、そのために基礎を大事にすること。この点についても、多くのビジネスパーソンがB’zから学ぶべきことではないか。
B’zの曲は「会社員応援歌」である
最後に1つ。B’zの曲は「会社員応援歌」、労働歌である。
もちろん、ラブソングも多数あるのだが、実は働く人を応援する、少なくとも仕事のシーンにハマる曲も多数ある。
「ultra soul」「ギリギリchop」「juice」「さまよえる蒼い弾丸」「兵、走る」などのヒット曲は、プレゼン前の準備、商談中、会議中などに見事にハマる。実は相当、会社員に寄り添っている。
ビジネスパーソンにピッタリの曲といえば、「Pleasure」シリーズである。これは、稲葉浩志が大学時代の軽音楽部の同期を歌ったかのような曲である。ライブのたびに新バージョンが発表され、少しずつ歌詞が変わっている。すべてのバージョンをサブスクで聴くことはできないが、登場人物の「あいつ」が少しずつ変わっていき、人生の喜怒哀楽を感じる。
ややレア曲だが私の推し曲は「MOVE」である。ベネッセの進研ゼミのCMソングだった。青春の悩み、それでも前に進む想いが歌われている。
サブスクが解禁された今、通勤中に、テレワーク中にB’zをぜひ。売れ筋と一蹴してはいけない。その中には、会社人生で必要な教訓がつまっている!
【働き方ラボ】は働き方評論家の常見陽平さんが「仕事・キャリア」をテーマに、上昇志向のビジネスパーソンが今の時代を生き抜くために必要な知識やテクニックを紹介する連載コラムです。更新は原則隔週木曜日。アーカイブはこちら。その他、YouTubeチャンネル「常見陽平」も随時更新中。