「いざとなったら起業家にベンチャーキャピタルの株を買い戻させる権利」
起業家が悪いことをしたり、契約違反行為をしたりした場合はもちろんですが、その他にも様々な条件で買い戻しを請求できる契約が存在します。主なもので株式上場に関するものです。ベンチャーキャピタルには、お金を出している投資家がいます。ベンチャーキャピタルは、投資家から預かったお金を自らの目利きで見つけてきた投資先の株式取得と上場しての売却によって利益を生み出さなければなりません。そして、投資家との契約は5年ほどを標準として決まっています。
よって、「いついつまでにIPO(新規株式公開)できなければ株を買い戻してください」という契約を要求してくることが多いのです。これは株の買い戻し金額が「買い戻し時の算出」による場合、最初に出資してもらった時よりも金額が高くなっていることが多いので、起業家としてはかなりの支出を必要とする危険なものでもあります。
「創業者の専念義務」
創業者の能力は、企業の成長力に大きく寄与するものです。よって、投資する側としては物的資産以上に成長のために重要視する資産だと言えます。よってこの契約により、投資側の事前承認なく経営者の兼職、兼業を禁止しようとするのです。また、許可なく取締役を辞任したり、再選を拒否したりもできないとすることが多いです。
計画の性質に合った資金調達先選び
ベンチャーキャピタルからの投資を怖がらせる意図はありません。基本的にかなり親身に企業が大きくなるためのサポートをしてくれる存在です。
しかし、ベンチャーキャピタルのほかにも、金融機関からの借り入れ、エンジェル投資家、最近増えている事業会社が運営するコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)など様々な資金の調達先があります。商品の企画段階で代金を集めるクラウドファンディングなどもあります。借り入れを恐れず、計画に合った性質の資金を調達することが企業を運営する上で非常に重要なのです。
ちなみに自分の資金による起業アイデアであっても上記のような資金提供者にプレゼンする機会をなるべく多く持つことをお勧めします。シビアに判定してきますが、先方も優良な投資先を探し出すことが仕事です。どこが足りないのか、どうしたら良さそうかというかなり現実的なアドバイスをもらえるはずです。
【今日から使えるロジカルシンキング】は子供向けにロジカルシンキングのスキルを身につける講座やワークショップを開講する学習塾「ロジム」の塾長・苅野進さんがビジネスパーソンのみなさんにロジカルシンキングの基本を伝える連載です。アーカイブはこちら