ミラノの創作系男子たち

絹織物の産地で育んだ夢 アーティストとアルティザンのバッグに挑む~女子編 (1/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 ミラノの北に位置するコモ県にはアルプスの山々を背景に美しい湖があり、その周辺は絹の産地として知られ、今もテキスタイルは地場産業である。今月の主人公、ジュリア・ラッケンバックは、ここで生まれ育った。

 小さな頃から、休みになると家族で山に遊びにいった。毎夏冬は、いつもフランスとスイスと国境を接するアオスタ渓谷に滞在した。子ども時代の思い出のほぼすべてが、あそこにあると言ってもいい。

 トレッキングで自然のなかに囲まれていることを愛し、冬はスキーに励むのは今も変わらない。彼女にとって何が大事なのだろう。

 「私の目標はいつも自分自身に満足することなの。仕事、今通っている大学院、どれも大事だけど、家族や人との関係に人生のなかで一番価値をおいているわ」とジュリアは答える。

 彼女はミラノにある名門のボッコーニ大学で国際経営学を学び、高級ファッションメーカーと大手戦略コンサルタント会社に数年間勤め、昨年、家業の会社が2007年につくったテキスタイル会社に入った。スイスに販売拠点としての本社があり、インドのバンガロールに70名ほどの従業員を抱える刺繍の工房をもつ。客先はフランスやイタリアの高級ファッションブランドだ。たまにアーティストの作品づくりも関与する。

 この会社名にはJLが冒頭につく。ジュリアのイニシャルを冠している。ジュリアはイタリア語ではGからはじまる。どうしてJなのだろう。

 「家系がドイツ系なので、両親は私が生まれたとき、Jでジュリアと呼ぼうと思ったらしいの。でも気が変わってイタリア風にGではじめることにした。だから正式にはGなんだけど、私としてはJが好きで、その方が英語と同じで発音されやすいでしょう。だからJにしたの」

 というわけで娘が活躍する舞台が整った。

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