「数字そのもの」と「数字に対する評価」は別もの
私たちは「数字」が含まれている文章を読むとなんとなく「説得力のある」ものだと感じてしまいます。しかし、「数字」と「評価」は別ものです。「相場」や「前後の長期、中期、短期の傾向」という情報に目を配る意識をつねに持たなくてはいけません。ギャンブルにハマってしまう人は、直前の「勝った」という基準が強く働いてしまい、全体としては負けている傾向であるにも関わらず続けてしまいます。焦っていると視野が狭くなり、直前に見たり聞いたりして強く印象に残っている数字を都合よく基準にしてしまうのです。
株の世界でも「安値覚え」など古くから理解されつつも、避けることのできない人が多いものとして知られています。
たとえばスマートフォンに3つの容量が用意されていたとします。
A:64ギガで40000円
B:128ギガで70000円
C:256ギガで80000円
どうでしょうか? Cの256ギガのモデルがとてもお得に見えてきませんか?
「相場」だったり、「必要性」というものが見えていないと、Bに10000円上乗せするだけで256ギガが手に入る! というように「基準がB」になってしまうのです。
「すいません! 1時間遅刻します!」
と伝えておいて、55分の遅刻で到着すると「まあ頑張ったな」と評価され、1時間5分の遅刻ですと、「まったくもう!」となりますね。これも、「そもそも遅刻は良くない」という常識(=相場)から離れて、直前情報である「1時間遅刻」を基準として判断してしまう傾向を表しているものです。ですから、みなさん遅刻の場合は「ちょっと多め」で宣言しておくと良いでしょう。その場の勢いでなんとなく「もうすぐ着きます」とか「(30分遅刻しそうだけど)25分で着くと思います」と伝えるよりも数段良い印象になるはずです。
目の前の数字で一喜一憂する前に
ビジネスの現場では直前の数字によって一喜一憂し、大きな決断をしてしまうことは避けなければいけません。以下のようなステップなしに数字に意味を持たせてはいけないのです。
- 「相場」を算出する
- 「長期、中期、短期」の傾向を分析する
売る側は「焦らせろ!」「怖がらせろ!」という工夫であなたの視野を狭め、その場で判断させようとしてくるはずです。普段からひと呼吸、ひとチェックを習慣づけたいものです。
【今日から使えるロジカルシンキング】は子供向けにロジカルシンキングのスキルを身につける講座やワークショップを開講する学習塾「ロジム」の塾長・苅野進さんがビジネスパーソンのみなさんにロジカルシンキングの基本を伝える連載です。アーカイブはこちら