1月末から長らく店頭から姿を消していた不織布マスク。5月末には、ようやくドラッグストアやスーパーマーケットにも戻ってきた。
マスク不足が深刻化したのは1月末。3月15日からは、「ヤフオク」や「メルカリ」などで横行していた転売が法律で禁じられた。各フリマアプリは、自主規制で3月上旬に出品を禁止する処置を実施したため、結果、マスクはますます買えなくなった。
マスク転売禁止が始まったころ、東京上野のアメ横や新大久保などの雑貨店や飲食店などで、50枚入りの箱マスクが売られ始めた。いずれも中国からの輸入品の直売なので転売禁止には抵触しない。
新大久保では、ネパール食材店やK-POPショップなどまったくの異業種店でも、店頭の一番目立つところへ山積みされていた。
利益率では新型コロナ前とあまり大差がない
異業種店で50枚入りマスクが3000円を超える価格で並び始めたため、通り過ぎる人たちからは、「暴利を貪っている」、「ぼったくり」、「足元を見ている」などの声が聞かれた。確かに平時と比べ5倍以上だったので、そのような声が挙がるのも無理はない。
しかし、実は暴利とは言い切れず、原材料が大幅に高騰したための価格だった。著者は輸入雑貨の販売も行っている。2月中旬ごろ、中国の業者からマスク情報が入り始めた。50枚入りの不織布マスクが、関税・送料込みで23ドルから28ドル(約2500円~3050円)だった。ということは、利益率ではコロナ前とあまり大差ないことが分かる。
新型コロナウイルスで世界的なマスク需要が高まり、素材である不織布不足が起こっていた。一時期は不織布の価格が5倍から10倍に高騰したくらいだ。その理由は、そもそもマスクを日常的に装着するのは世界でも日本くらいだからだ。スーパーやコンビニエンスストアで、他国では医療用マスク扱いされるような高品質な不織布マスクが普通に売られているのは日本くらいだろう。
日本は花粉症や毎年流行するインフルエンザなどもあり、マスクを装着する習慣が根付いている。しかし、たとえば中国の街中でマスクをしていると、伝染病、感染病患者と見なされ避けられる。マスクをする習慣がない国々では同様の扱いを受けることが一般的だ。
中国は近年、大気汚染が重大な社会問題となり、マスクを装着する人が増えた。それでも薄い不織布マスクでは信用できないと考える中国人は少なくない。そのため、N95のような大型の仰々しいマスクじゃないと効果がないと信じ込む中国人も多い。もちろん、99パーセントカットフィルター付きの不織布マスクなら、PM2.5も10も防ぐことができる。だが、信じない人は多い。
「品質が保証できず、多くが取り扱いませんでした」
マスク不足が深刻だった3月下旬、千葉県のレディースファッション販売店が、常連客に請われて輸入マスクを原価ギリギリの50枚2000円台半ばで販売した。すると、アベノマスクも届かない状況で困っていたと非常に感謝されたという。
4月以降、仕入れ価格は大きく下がったとの情報を耳にしている。しかし、高値だった2、3月に仕入れたものだと2000円以下で販売すると赤字になる可能性が高い。
現在、美容室から居酒屋、「ヨドバシカメラ」まで箱マスクが並ぶようになり、“マスクバブル”は崩壊しつつある。しかし、本来マスクが並ぶべきドラッグストアなどに並ぶのが遅れたのはなぜだろうか。
都内の大手ドラッグストアに取材すると、主に中国で製造していることに関係していたことが分かる。