ミラノの創作系男子たち

文化の壁に悩むインド人留学生 デザインで社会課題解決を目指す~女子編 (3/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 アディティが修士課程を終えるには、どこかの組織の現場でインターンシップを経験しないといけない。

 「民間企業でのビジネス最前線ではなく、アフリカの社会や難民のために活動している非営利団体で職業経験できるような機会を探している」と彼女は話す。そこでも、イタリア語の壁があるのではないかと彼女は心配している。

 こうした危惧がありながらも、彼女はイタリアの生活は快適だと享受している。何もかもインドと比べると物価が高いが、例外がある。ワインだ。

 「インドでは1本20ユーロのワインがイタリアでは3ユーロで済む!」と笑う。

 インドではバトミントンや水泳などスポーツに励んだが、ミラノに来てからは大学の勉強が忙しいのと心の余裕がなく、このところ身体を動かしてこなかった。

 「でも公共交通があてにならないインドではUberばかり使っていたから、歩いて出かけるなんて滅多になかったけど、ここではおかげで沢山歩いている」

 と言いつつ、気力が上向きになってきたのか、来週はジムに行こうと考えている。身体を使う場にいると案外文化差を感じなくなるものだ。一年後、インドに戻る前にもう一度彼女から話を聞きたいと考えている。それまでにイタリアのコミュニティに歓待された経験が増えていればと願う。

安西洋之(あんざい・ひろゆき)
安西洋之(あんざい・ひろゆき) モバイルクルーズ株式会社代表取締役
De-Tales ltdデイレクター
ミラノと東京を拠点にビジネスプランナーとして活動。異文化理解とデザインを連携させたローカリゼーションマップ主宰。特に、2017年より「意味のイノベーション」のエヴァンゲリスト的活動を行い、ローカリゼーションと「意味のイノベーション」の結合を図っている。書籍に『「メイド・イン・イタリー」はなぜ強いのか?:世界を魅了する<意味>の戦略的デザイン』『イタリアで福島は』『世界の中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』。共著に『デザインの次に来るもの』『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?世界で売れる商品の異文化対応力』。監修にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』。
Twitter:@anzaih
note:https://note.mu/anzaih
Instagram:@anzaih
ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解すると共に、コンテクストの構築にも貢献するアプローチ。

ミラノの創作系男子たち】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが、ミラノを拠点に活躍する世界各国のクリエイターの働き方や人生観を紹介する連載コラムです。更新は原則第2水曜日。アーカイブはこちらから。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ローカリゼーションマップ】も連載中です。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus