第21回 1歩目に最大限の注意を
ロジカルシンキングの最初の一歩は「情報を正確に読む」ということです。ある情報を目の前にして、自分にとって都合の良い部分のみをつまみ食いし、都合よくつなぎ合わせて解釈することは、自分以外の人にとっては「納得感がない」、つまり「論理的ではない」と判断されて、受け入れてもらえない行為です。
「セレクティブリスニング」や「シニカル・オフェンシブリスニング」を避ける技術(第19回)というのは、ロジカルつまり相手が納得しやすいコミュニケーションの大前提なのです。
子どもが陥りやすい“罠”
私の運営する学習塾ロジムで実際に遭遇する、子どもの興味深い例をご紹介したいと思います。次の問題は小学1年生向けの問題です。
カラスが4羽います。そこに新たにカラスが8羽飛んできました。さらに3回「カァー」と鳴きました。そうするとカラスが4羽やってきました。いま、カラスは何羽いますか?
答えは「16」ですが、驚くほど多くの子どもが「19!」と答えるのです。
「3回鳴いた」を足しているのです。「今は算数の問題だ」「計算をしよう」「問題に出てくる数字はなんだ?」という強い意識が働くようです。数字以外の情報は「いらないもの」と考え、「数字だけが重要」という偏った視点で「セレクティブ」に読んでしまうのです。
解法ではなく、「問題文自体を正確に読み取る」という段階でつまずくのは幼いからではありません。前回の解説のように、人間の思考にはそういう傾向があるからです。意識しなければ、とくに緊張する場面でその傾向が強く現れるのです。
次の問題も、学習塾の小学5年生が実際に取り組んだものです。
たかしくんが算数の問題を解いています。
《問題: 1312131213121312…と数字が並んでいます。30番目までの数字をすべて合計すると、いくつになりますか》
たかしくんは次のように解いて答えを出しました。
◆◆◆
「1312」がくりかえしならんでいる。4つで1つのかたまりだから、30番目までにこの4つのかたまりは、30÷4=7あまり2となる。だから、7つある。
1つのかたまりは、1+3+1+2=7なので、これが7つあるということは、合計で7×7=49となる。
しかし、あまりが2あるので、このあまりを足さなければならない。
だから、求める合計は49+2=51となる。
答えは51だ。
◆◆◆
さて、たかしくんの答えは正解でしょうか。
もし間違がっているとしたら、「どこが間違っているのか」「なぜ間違っているのか」「どのようにして解けば正解になるのか」について、たかしくんに説明してあげてください。
解答欄に書かれる最も多いものはこちらです。
30÷4=7あまり2
7×7=49
49+1+3=53 →答え 53
この問題は「たかしくんになぜ間違えているかを説明してあげてください」なのですが、「あなたが正しいと思う答えを書きなさい」と自分に都合よく変えてしまうのです。この問題に取り組ませ、解答用紙を回収したあとに、「みなさんが取り組んでいた問題はなんですか?」と質問をすると
「30番目までの合計を求める!」
と答える生徒が少なくないのです。問題文全体の中から、自分がとっつきやすい部分だけを抜き出して、それが問題なのだと思い込んでいるのです。