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洗練されたリーダーシップは「聴く力」に支えられる 日本文化が生かされる時 (2/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 ベルガンティの話も踏まえながら、ぼくなりにこの先のロジックを整理しておきたい。なぜ聴く力が新しいカタチのリーダーシップに繋がるのだろう、と。

 例えば、他人のある発言に対して、その発言の背景が理解できるフィードバックを試みる。「何故、そういう発言をするの?」と雑な質問をするのではなく、「君の今の言葉は、こういう風に考えたらどうだろう?」と、いわば誘い水を向けることで、相手から「いや、実は、こういうつもりで発言した」という答えを引き出していく。このコミュニケーションに洗練さが求められる。

 このように他人の発言の動機が分かることで、その先の背景の深堀が可能になる。それによってお互いが接近し合える。

 考え方の食い違いによって衝突が生じるのではなく、考え方の違いによってお互いの関係がより親密なものになるのである。

 そして、この親密な関係があってこそ、自分の新たな考えや方向づけに対して確信をもてるようになる。人はリスクの高い不安な状況では新たな決断をしづらい。どうしても自らを守ることを優先する。結果として孤独なリーダーは、どうしても自分の主張を声高に叫ぶことに陥りやすい。

 こうした事態を避けるには、自分の「揺れ」や「ブレ」を寛容に受け取りながらも適切な批判をしてくれ、前進するように背中を押してくれる人が傍らに欲しい。このような存在の人を得るにも、最初に「聴く耳ありき」なのだ。

 いわゆる「人の上に立つ人は他人の言葉によく耳を傾ける」というセリフがもつ意味とは異なる。

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