曲解を避ける「pros-cons表」で整理する
「Pros」というのは良い点 「Cons」というのは悪い点という意味です。
この表を埋めるように聞き耳を立てていれば、Prosにのみ偏ってしまうことを避けることができます。上の例ですと、Consが一切ない表になってしまいますので聞き取っている情報に偏りがあることに気づくことができます。とくに日本人はあいまいなYESを言いがちですので、Prosは話半分、Consに注力する位で丁度良いのです。
2.シニカルリスニングとオフェンシブリスニング
「シニカルリスニング」とは、相手が自分を騙そうとしたり不当に利益を得ようとしているのではないかという偏見(バイアス)によって情報を歪めてしまうことです。「オフェンシブリスニング」とは、相手の中に間違いや矛盾を見つけてやろうという強い意志が働いてしまうことで、同様に情報を歪めてしまうことです。
例えば、営業で失敗続きになってしまい、「製品Aはどうせ顧客にとって良いものではないのだろう」というバイアスができ上がってしまっていると、先程の担当者のコメントを下のように曲解してしまうのです。
- 「お値引きは難しいのですか?」を「高すぎるよ!」
- 「説明会は開いてもらえますか?」を「難しすぎて使いこなせないよ!」
そして、「価格も高すぎて、機能も複雑すぎるという反応で見込みなしです」というような判断や報告に至ってしまいます。いずれも、正確に聞き取れれば、価格や説明会の実施についての対応につながり、受注の可能性を大いに高められたはずの情報です。しかし、「見込みなし」という評価がバイアスとしてすでに頭の中に出来上がっていることが原因で、勝手な判断につながっているのです。
「DIE」で客観的に受け止める
これを避けるには、「評価」の前に必ず、目の前で起きていることを「そのままに描写」してみる習慣をつけることです。これは「DIEモデル」と呼ばれるコミュニケーション手法です。
- Description:描写
- Interpretation:解釈
- Evaluation:評価
の順で相手のメッセージを理解しようというものです。描写という段階を踏むだけで、狭く・決めつけた解釈・評価に走ってしまうのを避けることができると言われています。
「お値引きは難しいですか?」という発言にたいして「高すぎて買えない」と解釈して、「見込みなし」と評価する前に、発言された状況について「面会の時間をとって質問してきた」や「機能については好評価している」といった描写の手続きを踏むことで、「値引きさえしてくれれば契約したい」という解釈が生まれ、「見込み大」という評価にもつながるということです。
「聞く」というのは、「話す」ためにもっとも重要なプロセスです。今回紹介したのはその入り口である「正確に聞き取る」というスキルです。この先には、「意図を読み取る」や「隠された前提を読み取る」などより高度な「聞く技術」というものも存在します。みなさんも「聞く」を疎かにせず、顧客の声に耳を傾けてください。
【今日から使えるロジカルシンキング】は子供向けにロジカルシンキングのスキルを身につける講座やワークショップを開講する学習塾「ロジム」の塾長・苅野進さんがビジネスパーソンのみなさんにロジカルシンキングの基本を伝える連載です。アーカイブはこちら