ミラノの創作系男子たち

「なぜ?」の連続が作品に 哲学畑の彼女は問題の構造に立ち向かう~女子編 (1/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 この連載を1年間続けてきた。そこで一つ思った。タイトルが「創作系男子」ではあるが、男性だけではなく、たまには女性も取り上げたい。紹介したい女性も多く、除外するのはもったいないのだ。今回はその第一弾だ。

 マリアキアラはデジタルマーケティング会社でアート・ディレクターの職にあるが、この世界にありがちなスピード思考の信奉者ではない。ゆっくりとものを考える価値を十分に理解している。一般にイタリアの人は人文系への傾倒があるためか、時間をかけて考えて出す結論に重きをおく。だが、彼女には「時間をかけて」の前に「とても」という副詞をつけるのがふさわしい。 

 「企業経営でいえば、最初の段階に十分な思考ができる時間が必要で、そこで方向が決まれば後はスピード」とマリアキアラは話す。

 彼女はイタリアの大学で哲学を勉強し、現象学のフッサールも教壇に立っていたドイツのフライブルク大学で修士を修めた哲学者だ。その後、小さい頃から絵を描くのが好きなマリアキアラは、たまたまデザイン大学の奨学金も受けることになる。哲学で博士課程に進むことも考えたが、学校という世界に留まるのには躊躇したのだ。それが現在の仕事への道を拓いた。

 「哲学とは何故?を問い続ける学問だから、顧客に何故を問い続ける今の仕事は向いているわ。私の関心は常にコンセプトに関わることだから」と語る。

 戦略を考えるのが彼女の仕事だ。

 その一方で、本のイラストを描くことも副業にしている。子供向けの絵本、病気の療養のためのイラスト、哲学の本と多岐にわたっている。

 これだけ聞いたら、相手が女性でもやはりちゃんとインタビューして記事にしたいと思うではないか。なぜ哲学を勉強したのか?なぜ哲学を勉強の後、ファインアートの世界に行かなかったのか?と、ぼくも「何故」を連発したくなったのだ。

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