また、フレームワークとして明文化されていなくても経験を積んだ経営者・ビジネスマンはそれぞれが独自のチェックリストを持っているものです。たとえば世界的に有名な投資家のウォーレン・バフェット氏は「投資を成功させるために必要なのは、ずば抜けたIQの高さではない。必要なのは意思決定を行うための健全で知的なフレームワークだ」と言っています。そして同氏が率いる米バークシャー・ハサウェイが2017年に公表した年次レポートには、同社が投資の基準として6つのチェックリストが明記されています。
最前線で様々な経営判断を毎日のようにしている人たちは、他人から見ると「独自の嗅覚」とでも言いたくなるような判断力を持っています。身近にいる優秀な先輩も経験を活かした独自の行動指針とも言えるチェックリストを持っているはずです。貪欲にコミュニケーションをとって、そういった「判断力」を自分のものにしていくとみなさんの成長は格段に早くなっていくでしょう。
点検を重ねていて遅れるのはNG
最後に、考え「モレ」を完全になくすことはほぼ不可能です。そもそも思いつかないから考え「モレ」が発生するわけですので、その性質上常に考えモレの可能性は残っています。ですから「モレなく、ダブりなく」を意識し始めの頃は、
- ・考えモレを怖がって、いつまでたってもチェック
- ・検討し続けていて物ごとを前に進めることができない
という状態に陥ることがあります。これは若手だけでなく、組織全体にもよくあることで、日本の企業では
- ・点検を重ねていたので物事の進行が遅くなりました
というのは大概許される文化があります。しかし、競争のあるビジネスの世界ではそのうちに相手が前進していたということがありますので、「ある程度の点検」を素早く実行して、進みながら考えるという技術も必要なのです。
そういう視点で考えると、若いみなさんの立場では、「このような項目についてチェックしました」という過程を必ず上司・顧客となるべく早い段階で共有することをおすすめします。「本当にそれだけ考えればいいのかな?」という不安はあなたひとりで抱えるものではなく、関係者全員が知識と経験を動員して対応していくものなのですから。「絶対大丈夫」と言い切れない状況を正確に受け止めていくのがビジネスの世界なのです。
次回はこの「フレームワーク」を使って、問題を解いてみましょう。
【今日から使えるロジカルシンキング】は子供向けにロジカルシンキングのスキルを身につける講座やワークショップを開講する学習塾「ロジム」の塾長・苅野進さんがビジネスパーソンのみなさんにロジカルシンキングの基本を伝える連載です。アーカイブはこちら