ここで思い出されるのが、リーマン・ショック後の業績悪化時にいくつかの大企業が設置した「追い出し部屋」だ。一つの部屋に押し込むことで心理的に追い込み自己都合退職を促す手法であり、これこそが終身雇用崩壊の号砲のようなものだった。副業をしている社員であれば、会社を辞めても何とか食っていける。うがった見方かもしれないが、会社は副業解禁を「マイルドな追い出し部屋」のようなものとして利用できてしまうのだ。
だから副業解禁はダメと言っているのではない。強調したいのは、副業解禁は社員の自由を認めるという甘い話だけでは済まされない、ということだ。
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【プロフィル】山田俊浩
やまだ・としひろ 早大政経卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。週刊東洋経済の編集者、IT・ネット関連の記者を経て2013年にニュース編集長。東洋経済オンライン編集長を経て、19年1月から週刊東洋経済編集長。著書に『孫正義の将来』(東洋経済新報社)。