日本列島を取り巻く海を舞台に「蒸気機関の発明以来」ともいわれる大革命が胎動している。海上を自動で運航できる無人運航船(自動運航船)の開発が世界規模で進んでいる。船員不足や環境問題への処方箋としてはもちろん、産業や暮らしの変革につながる期待が高まっている。先行する欧州は実証実験もクリアし、安全対策や国際ルール作りも焦点となるなか、海に囲まれた日本も「海のドローン」への対応は待ったなしだ。(柿内公輔/SankeiBiz編集長)
無人運航船と2040年の未来図
ここは2040年の東京。臨海部の住民は、マンションエントランスの目の前の船着き場から無人運航船に乗り、通勤や買い物へ。時間に余裕のある観光客は、空港から都心へ無人運航船で観光しながら移動。オンデマンドの水上タクシーが行き交う。船着き場の周囲には商業施設が整備され、水辺に賑わいが戻ってきた―。
かたや2040年の瀬戸内海。無人運航船の出現で、深夜帯の運航や柔軟な航路の設定が実現し、海上旅客利用者が増えた。これまで以上に地元住民の生活の足として活用され、学校などのインフラも再配備された。高頻度の島嶼移動が可能となり、他の陸上交通との接続性が向上し、新たな観光需要も発生している―。
これらは日本財団が描いた、今から約20年後の日本の無人運航船の未来像のイメージだ。日本財団は2018年8月から2019年3月にかけて、船舶の無人化による将来の日本社会と期待される効果について有識者委員会(事務局:三菱総合研究所)を6回開催した。
4月に発表された報告書「無人運航船がつくる日本の未来-Future 2040」によると、2040年には国内を航行する船の50%以上、かつ新たに建造される船のすべてが無人運航船になるという。そして無人運航船がもたらす経済効果はなんと約1兆円に達するとした。