「じつは単月100時間、複数月平均80時間という上限は、労災で過労死の判定に使われる過労死ラインと同じ。現実は法律の先を行っていて、すでに残業を過労死ライン以下に抑えている大企業は多い。大変になるのは、長時間労働で経営を支えている中小企業でしょう」
運用の厳格化に注意しよう
ただ、法定の数値だけに注目していると、思わぬところで躓きかねない。改正後は運用が厳格化され、いままで事実上許されていたことが通用しなくなる可能性があるからだ。たとえば過半数労組だ。
「労使協定は、労働組合が非正規社員も含めて従業員の過半数で組織されていないと有効になりません。以前から法律上はそうでしたが、過半数労組ではないのに36協定を結んだ企業もあった。今回から労働基準監督署に提出する書式が変わり、労組の名称を書く欄に、過半数労組かどうかの確認が括弧書きで加わっています」
新協定届は、「時間外労働をさせる必要のある事由」を書く欄も拡充された。特に、特別条項を設ける事由として認められるのは、製品トラブル、クレーム対応など、一時的・突発的なものに限られる。単なる人手不足といった理由では残業させられなくなる。