Fromモーニングピッチ

豊富な経営アセットを有効活用 大企業発ベンチャーがメガベンチャーに名乗り (1/2ページ)

福島和幸
福島和幸

 デロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)です。当社はベンチャー企業の支援を中心に事業を展開しており、木曜日の朝7時から「Morning Pitch(モーニングピッチ)」というイベントを開催しています。毎週5社のベンチャーが大企業の新規事業担当者や投資家らを前にプレゼンテーションを行うことで、イノベーションの創出につなげるのがねらいです。残念ながら新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のためオンライン開催となっていますが、いずれ会場(東京・大手町)でのライブ開催に戻す予定です。

 モーニングピッチでは毎回テーマを設定しており、それに沿ったベンチャーが登場します。ピッチで取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信する本連載。今回は大企業発ベンチャー特集です。

 DX対象の大型ファンド相次ぐ

 2020年はCOVID-19の影響がありましたが、上場企業とベンチャー企業との協業数やCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)からベンチャー企業への投資額が前年を上回るなど、堅調に推移しております。このような状況を踏まえ、大企業の豊富な経営アセットを活用し新規事業に挑戦する社内ベンチャーを大企業発ベンチャーと定義して、特集を組むことにしました。

 近年は、大企業の中の技術やアイデアを事業化する活動が増加傾向にあります。とくにわれわれが着目しているのは、こうした大企業発ベンチャーが躍進を遂げ、メガベンチャーへと成長する可能性が高まっている点です。また、評価額が10億ドルを超える未上場のスタートアップであるユニコーンとのジョイントベンチャーを設立し、事業規模を狙った取り組みにも注目しています。

 明確なゴールと最適な予算配分

 大企業発のメガベンチャーが誕生するには3つのポイントがあると思っています。まず明確なゴールの設定と最適な予算の配分です。IPO(株式公開)や1000億、2000億円以上の事業を作り出すといった明確な目標を定め、必要な予算を投下しているのかといったことが重要です。2つ目のポイントは、戦術と戦略、施策を整合させることです。

 よくあるのは手段が目的化するパターンで、「アクセラレーションプログラムを開始しました」「CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を立ち上げました」といったケースです。明確なゴールを設定せずに施策だけ先行し、数年後に目立った成果もなく活動を中止してしまう企業が散見されます。

 3点目が経営アセットを活用したビジネスモデルです。自社のアセットを活用し技術やプロダクトを磨くこと、量産化、拡販が期待できることから、大企業の豊富なアセットは競争優位を構築する上で重要です。

 大企業に所属しながらの起業も可能に

 こうしたトップダウン型の戦略だけではなく、ボトムアップ型でもさまざまな挑戦が行える環境も整備が進んでいます。

 そのひとつが社内新規事業制度で、大企業が挑戦する機会が増えています。2020年度からは経済産業省が打ち出した出向起業等創出支援事業が開始しています。大企業に所属していながらも起業ができ、起業した後の助成金の費用を一部負担するといった制度です。ファイナンスの機会も増加しており、事業の一部を外部に切り出し、新会社として独立させて事業価値を高めるカーブアウトを対象としたVC(ベンチャーキャピタル)も台頭しています。

 今回はこうした施策を活用して起業した5社の大企業発社内ベンチャーを紹介します。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus