世界初の透明断熱材
ティエムファクトリ(東京都港区)は京都大学との共同研究で開発した世界初の透明断熱材「SUFA」を提供しています。柔らかく軽量なため、家や自動車の窓など透明な部分に断熱材を適用することが可能になります。また、断熱材としての省エネ機能だけではなく、エネルギーを生み出す「創エネ」用途での展開も検討しています。具体的には光を通すが熱を通さないという特性を生かし、二酸化炭素(CO2)を排出せずに100~200度といった高温の熱を作り出せる太陽光パネルの事業化を計画しています。工場の熱源に活用したいとのニーズもあります。パウダー状にして樹脂や繊維と複合化し、ブランケット素材の代替としても活用できます。
金属空気電池向けの触媒
クリーンエネルギーとして注目されている燃料電池は水素と酸素の反応で電気を作りますが、酸素還元触媒にはレアメタルの白金を必要とします。AZUL ENERGY(アジュールエナジー、仙台市青葉区)は、レアメタルを含まず白金に比べ大幅にコストを削減できるAZUL触媒を開発、提供しています。同触媒は、塗料などに用いられる青色顔料技術を応用して開発しました。水素の代わりに金属を活用する「金属空気電池」は、空気中の酸素を使って発電するため、将来的にはドローンや電気自動車(EV)など、高出力で高容量なバッテリーとして活用されることが期待されています。この分野での展開も視野に入れています。
水晶に比べ電力消費は10分の1
スマートフォンは電波を使って音声や情報を送受信します。この電波の基となる基準信号を正確に作り出しているのが水晶デバイスで、自動車やAV機器にも搭載されています。東北大学と共同して開発した新圧電材料に基づき、水晶に代わるタイミングデバイスを開発したのがPiezo Studio(仙台市青葉区)です。水晶では実現できなかった高速発信起動と低消費電力化を同時に実現できる点が特徴で、これまでの5分の1から10分の1レベルまで電力消費を削減できます。次世代5Gでは高速化と消費電力の抑制が課題で、こうしたニーズに合った商品です。
量子人材の育成や発掘
QunaSys(キュナシス、東京都文京区)のコア事業は共同研究と、量子コンピューター上で手軽に既存手法との比較を行える独自ソフト「Qamuy」の開発、提供です。共同研究では化学業界の先端プレーヤーと、量子コンピューター上で重要物性値を計算するためのアルゴリズムを開発しています。世界に先駆けて考案したアルゴリズムは論文発表も行っています。量子人材の育成や発掘に取り組むため、コミュニティの運営も行っています。化学や素材、電機メーカーなど40以上の企業が加入しています。
低エネルギーでガスを分離、貯蔵
名古屋大発ベンチャーのSyncMOF(シンクモフ、名古屋市千種区)は、ゼオライトや活性炭に代わる材料で、ナノメートルサイズの細孔を持つ結晶性の固体「MOF」を提供しています。低エネルギーでガスの分離や貯蔵を行え、各企業の要望に応じたMOFを選定し、装置の設計・作成までの全工程をサポートします。2019年の設立ながらすでに70社以上との取引があります。多くはモビリティ業界との協業ですが、排気ガスから特定ガス成分を分離・捕捉し室内空間の快適化や曇り止めなど、多様な協業ニーズがあります。
温暖化対策をはじめとした地球規模の課題を解決するためには、素材ベンチャーの技術・アイデアが重要な役割を果たすだけに、大企業や自治体との連携の加速が求められます。また、研究成果の製品化には一定の資金と時間を必要とするため、VCとの協力も大事です。
【Fromモーニングピッチ】では、ベンチャー企業の支援を中心に事業を展開するデロイト トーマツ ベンチャーサポート(DTVS)が開催するベンチャー企業のピッチイベント「Morning Pitch(モーニングピッチ)」が取り上げる注目のテーマから、日本のイノベーションに資する情報をお届けします。アーカイブはこちら