デロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)です。当社はベンチャー企業の支援を中心に事業を展開しており、木曜日の朝7時から「Morning Pitch(モーニングピッチ)」というイベントを開催しています。毎週5社のベンチャーが大企業の新規事業担当者や投資家らを前にプレゼンテーションを行うことで、イノベーションの創出につなげるのがねらいです。残念ながら新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のためオンライン開催となっていますが、いずれ会場(東京・大手町)でのライブ開催に戻す予定です。
モーニングピッチでは毎回テーマを設定しており、それに沿ったベンチャーが登場します。ピッチで取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信する本連載。今回は「Nature(ネイチャー)」です。地球環境の危機に直面し、ビジネスでサステナビリティ(持続可能性)という観点が不可欠となっているのに加え、個人ベースでも自然との関わり方を考えることが必要との考えからテーマを設定しました。
ESG投資が活発化
地球環境に関しては2000年代から、パリ協定やSDGs(持続可能な開発目標)など4つの重要な国際指標を設定、運用することでグローバルでの足並みをそろえてきました。特筆すべき点は、それぞれが提唱された後に複合的かつ持続的に絡み合って、環境に対する機運を高め各国の政策に反映されている点です。
一連の動きに伴いESG(環境・社会・企業統治)投資も活発化しており、グローバルベースでは2018年で3100兆円と16年比で34%の伸びを示しております。日本の投資額は欧米に比べるとまだまだ小さいですが、伸び率は高く、さらに盛り上がっていくことでしょう。
ベンチャーが生活者の意識高める
ただ、指標の設定にもかかわらず地球の温暖化は進行しています。昨年12月に開催された東大主催の国際会議「東京フォーラム2020」では、地球環境問題に対し何も行動を起こさず現状のままの経済活動を続けると、10年後には施しようのない不可逆な世界が待っているとの指摘がありました。
こうした動きに呼応する形でベンチャー企業が起点となって、地球環境に対する生活者の意識を高め行動を促す取り組みが相次いでいます。
BIOME(バイオーム)は環境省と連携して「気候変動いきもの大調査」を展開しています。地球温暖化の影響で分布が変化している生物をスマートフォンのアプリで記録し、温暖化の影響を明らかにしていくとともに、国民に温暖化対策の行動を呼びかけるのが目的です。
ポイ捨てごみの分布状況を可視化
2021年に環境省の環境スタートアップ大臣賞を受賞したピリカは、ごみ収集車のドライブレコーダーを活用し、ポイ捨てごみの分布状況の可視化に向けた取り組みを産業廃棄物会社と連携して開始しました。
自然との新たなかかわり方を提案する事例のひとつが、VILLAGE INC.とJR東日本スタートアップによる取り組みです。無人駅の上越線・土合駅(群馬県)に豪華なキャンプを楽しめるグランピング施設を開設し、地域活性化を目的とした実証実験を行っています。
日本唯一の産業用水中ドローンメーカーであるFullDepthは深海を身近なものとするため、新江ノ島水族館と組んで海底の様子や生き物を観察する展示会を開催しました。
こうした事例を踏まえると今後はベンチャーが媒介役となり、個人として自然や環境問題にアプローチする動きが活発化する見通しで、今回は自然派ベンチャー5社を紹介します。