消費者の価値変化を適切に把握
このためCOVID-19による新たな生活行動の傾向を理解し、それによる消費者の価値変化を適切にとらえた上で新たな事業を見極めていくことが重要になってきます。具体的にはわれわれの行動がどのように変容したのかという部分と価値の変化が掛け合わさって、「どういったコンシューマービジネスが誕生するのか」といったことをきちんと認識しておくことが必要です。
COVID-19によって消費者の価値に対する考え方は(1)所有から利用価値を重視(2)コミュニティやつながりを強く希望している人の増加(3)環境問題など社会的関心への高まり(4)健康志向のさらなる高まり-といった事象に結びついており、これらがビジネス発展のためのカギになると考えています。
薬をロッカーで受け取り
ベンチャーとの協業によって、価値の変化に呼応した新しいビジネスも誕生しています。スマートコインロッカーを手掛けるSPACER(スペースアール)は神奈川県を中心にドラッグストアを展開するクリエイトエス・ディーと連携。病院での感染リスクを懸念する消費者の声を踏まえ、処方された薬をロッカーで受け取れる事業を始めました。
また、クラウドワークスとOPSIONが資本提携し、クラウドオフィス事業を開始しました。テレワークで失われたひとつの居場所を共有する体験価値を、離れていても実現できるサービスです。
コンシューマー事業の領域はヘルスケアやレジャー、ハウジング、ファッションといったように幅広いですが、転換点という時代の中から大きく羽ばたくことが期待される5社を今回は紹介します。
AI相手の英会話アプリ
日本人は外国人相手に話しかけることが苦手な国民性で、アジア各国の中で英語力は最下位です。そうした現状を踏まえ、人工知能(AI)を相手にストレスフリーな形で英会話を行えるアプリを提供しているのがスピークバディ(東京都港区)です。機能も充実しており、フリートークだけでなく音声認識や英作文の添削も行い、英会話レベルも判定します。月額1950円という価格帯も魅力です。
フォロワーの購入で報酬
アパレル業界は来店客の大幅な減少で苦戦を強いられておりEC(電子商取引)サイトの活用法が、より重要になってきます。SPRING OF FASHION(東京都渋谷区)のショッピングSNS「STYLISTA」は、SNSユーザーが商品を販売し、価格の約10%分を成果報酬として得られるサービスを提供しています。サイト内の商品を選びフォロワーに紹介し、実際に購入されると報酬が発生する仕組みです。
AIで子供の写真を瞬時に選択
千(セン、東京都千代田区)は、幼稚園や保育園の写真に関するサービスを撮影から集金、印刷、納品までをワンストップで代行するサービス「はいチーズ!」を提供しています。写真を選ぶ際にはAIによる顔検索機能によって、自分の子供を自動的にピックアップできるため、保護者はネットから手軽に購入することができます。すでに7000団体に対してサービスを提供しており、COVID-19を契機に問い合わせも急増しています。
IP軸にエンタメ業界で事業
グリッジ(東京都港区)はIP(知的財産権)を軸にエンターテインメント業界で事業を展開しており、主に次世代型音楽レーベルとYouTubeの音楽ラジオを運営しています。レーベルで提供した中には、TikTokジャパンで流行語大賞を受賞した楽曲もあります。音楽の影響力を活用してさまざまな企業と連携しながらのプロモーション活動に力を入れており、ファッションや飲料、ゲームなどさまざまな業種と協業を進めていく考えです。
自転車のWebメディア
自転車創業(東京都新宿区)は、日本最大級の自転車Webメディア「FRAME」と「マサルでもわかる自転車保険」を運営しています。サイトにユーザーを集客し、保険・物販と広告によってマネタイズするビジネスモデルで、FRAMEは記事と動画を合わせて300万ビューを誇ります。COVID-19によって密を避ける移動手段として自転車に対する注目度が高まっており、外部との協業で事業拡大を目指します。
COVID-19を契機に拍車がかかった消費行動の変化は今後多様化するとみられ、コンシューマー向けベンチャーの活躍の場は広がることでしょう。
【Fromモーニングピッチ】では、ベンチャー企業の支援を中心に事業を展開するデロイト トーマツ ベンチャーサポート(DTVS)が開催するベンチャー企業のピッチイベント「Morning Pitch(モーニングピッチ)」が取り上げる注目のテーマから、日本のイノベーションに資する情報をお届けします。アーカイブはこちら