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移動革命「MaaS」にアクセル モビリティ系ベンチャーが巨大市場を拓く (2/2ページ)

ゼン・ティン
ゼン・ティン

 MaaSを巡る動きは日本でも活発です。経路検索や決済・予約までを一気通貫で行えるサービスを中心に普及してきましたが、最近では医療や観光と掛け合わせたサービスが注目されています。

 MaaS×医療、観光

 例えばMONET Technologiesがフィリップスと共に長野県伊那市で展開している事業は、診察補助機能を車内に搭載し看護師が患者を訪問し、医師がテレビ電話を通じて遠隔診療を行っています。東急やJR東日本などは伊豆半島で、鉄道やバス、レンタカー、レンタサイクルといった交通機関をスマートフォンで検索、予約、決済し、目的地までシームレスに移動できる観光型MaaSに取り組みました。今後は住宅や買い物、介護、物流などとの組み合わせが加速し、非常に可能性が大きい領域です。また、トヨタ自動車とグーグルが構想を明らかにしているように、さまざまな都市サービスと融合すればスマートシティに発展していきます。

 今回はコネクテッドやシェアリングなどの領域から5社を紹介します。

 相乗りで空港シャトルタクシー

 お客様を乗せずに走行するタクシーが全体の6割に達する点に着目し、プライベートではなくパブリック向けに対応したサービスを展開しているのが、NearMe(東京都中央区)です。タクシー配車アプリと連携して事前に予約。相乗りする人と目的地までの最適なルートを人工知能(AI)が判断する仕組みで、空港送迎に利用できる空港シャトルや、オフィスを繋ぐ通勤シャトルなどさまざまなサービスを展開していきます。

 検出技術でMaaS市場を開拓

 画像認識AIアルゴリズムの開発を行うtiwaki(滋賀県草津市)は、独自の深層学習技術を土台にした物体検出や姿勢認識、顔検出などの技術を得意としています。とくに姿勢認識の骨格検知技術は、200倍以上の高速化を実現しました。また、応用技術として新たな非接触ユーザーインタフェース技術も開発。国内外で特許を取得済みです。一連の技術をさまざまな分野に提供し、とくにMaaS分野に注力する考えです。

 クラウド型タクシー配車システム

 クラウド型タクシー配車システムや配車センターの委託事業を全国で展開しているのが、電脳交通(徳島市)です。タクシーの位置情報や稼働状況を一目で把握できるため、電話やアプリによって配車依頼があった場合、最適な指示を簡単に出すことができます。営業解析のモニタリングも可能になります。タクシー業界も人手不足に伴う業務の効率化が求められており、こうした課題の解決につながるシステムです。

 顧客中心の観光都市を開発

 scheme verge(東京都文京区)は道路や航空、海運など複数の交通機関を連携させるマルチモーダルMaaS「Horai」を活用して、顧客を中心とした観光都市の開発を進めています。顧客の動きを追跡できるという特性を生かし、都市に関わるテクノロジーやシステムを個人中心に再編するなど、次世代型のMaaSデベロッパー事業を目指していきます。

 ヘリコプターのライドシェア

 オンデマンド型によるヘリコプターのライドシェアサービスを提供しているのがAirX(東京都新宿区)です。ビジネスやゴルフ、観光での移動や空撮に利用できます。一般的なヘリコプターの場合、ユーザー1回当たりのチャーター料金は20万~30万円規模ですが、ライドシェアと稼働率の向上によって数万円規模に抑制できます。今後はサービスの提供エリアの拡大や、着陸地での企業連携を進めていきます。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって移動中の密対策が課題となっています。スタートアップのさらなる台頭により、モビリティ革命の加速が期待されます。

清華大学・経営工学→東京大学・技術経営戦略学。トヨタ生産方式をはじめ、日本的経営に興味があり来日。前職では官公庁・自動車メーカ向けに、AI、自動運転、シェアリング、コネクテッド等の次世代モビリティ関連の技術戦略プロジェクトを経験。現在は大企業向けのオープンイノベーション、スタートアップの海外進出等を担当。「人工知能の未来2016-2020」(EYアドバイザリー著、日経BP社出版)の執筆に参画。

【Fromモーニングピッチ】では、ベンチャー企業の支援を中心に事業を展開するデロイト トーマツ ベンチャーサポート(DTVS)が開催するベンチャー企業のピッチイベント「Morning Pitch(モーニングピッチ)」が取り上げる注目のテーマから、日本のイノベーションに資する情報をお届けします。アーカイブはこちら

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