視力測定などに特化した店舗
日本では眼鏡販売のJINSの事例がユニークです。人工知能(AI)を活用した次世代型の新店舗は、フレームの選択と度数計測に特化して決済はアプリから行います。商品在庫を抱えずに運営できるため、視力測定などの接客に注力できます。
三陽商会はディープラーニングを活用したAIの社会実装事業を展開するABEJAと連携し、同社の解析技術を活用して店舗内の回遊率と接客力を高め、売り上げを伸ばすことに成功しました。
このようにオンラインとオフラインの在り方が大きく変わる中、今回は店舗とECが抱える課題を解決する5社のベンチャーを紹介します。
1秒で数百個を読み取る
RFルーカス(東京都港区)は「Locus Mapping」というシステムを展開しています。在庫や物品管理はアナログ的な作業が中心ですが、デジタルトランスフォーメーション(DX)によって生産性の向上を実現します。品物にRFIDタグを貼り付けてハンディリーダーをかざすだけで、わずか1秒の間に遠隔から数百個までの品物を読み取って、何がどこにどれだけあるのかを、デジタルマップ上に表示します。
DXで3密対策
北海道大学発ベンチャーのAWL(東京都千代田区)は既存の防犯カメラ事業で培った技術を活用し、DXを通じ新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う“3密”対策に力を入れていきます。具体的には店舗の状況を分析し可視化するAIカメラソリューションによってカメラに映る人物を認識し、性別と年齢を推測。集計結果はダッシュボードでリアルタイムに確認できるシステムです。
数えない在庫管理
ZAICO(山形県米沢市)はITリテラシーが高くない中小・零細企業をターゲットとした「数えない在庫管理」が特長のクラウド在庫管理ソフトを展開しています。アプリにはRFIDと画像認識、品物を上に載せるだけで個数を読み取るIoT重量計の機能を搭載しており、製造業や小売りを中心にユーザー数は10万を突破しています。在庫品の中古市場での価値をAIが分析し、同市場で売るケースもあります。
コンバージョン率を2.5倍に
ユーザーに最適な提案を行うセールスオートメーションAI「SELF LINK」を提供しているのが、SELF(東京都新宿区)です。
これまでのウェブ接客・会話AIは聞かれたことに答えるだけの機能でしたが、このAIはユーザーの状態などあらゆることを記憶し、ユーザーに適した情報や会話を提供し企業側のマーケティング活動に貢献します。東急百貨店でのECサイトでは、コンバージョン率を2.5倍にした実績があります。
スマホ、カード決済を1つに
日本でもスマートフォン決済の事業者が増えており、クレジットカード決済も含めるとその数は膨大です。導入店舗側は経理業務などに負担を感じていますが、これらの決済を1つにまとめることができるのが、Take Me(東京都港区)が運営する決済サービスです。現在、世界で展開されている100種類以上のキャッシュレス決済に対応でき、ハードウエアや月額手数料は無料とコストをかけずに導入できる点も強みです。
COVID-19によってテレワークが普及し、ECサイトでの購入が増えるなど消費者の価値観は大きく変わりつつあります。リテールテック系ベンチャーの活躍の場は確実に広がりそうです。
【Fromモーニングピッチ】では、ベンチャー企業の支援を中心に事業を展開するデロイト トーマツ ベンチャーサポート(DTVS)が開催するベンチャー企業のピッチイベント「Morning Pitch(モーニングピッチ)」が取り上げる注目のテーマから、日本のイノベーションに資する情報をお届けします。アーカイブはこちら