Fromモーニングピッチ

ウィズコロナで消費者の価値観も変化 リテールテックベンチャーが伴走する (1/2ページ)

羽渕麻美
羽渕麻美

 デロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)です。当社はベンチャー企業の支援を中心に事業を展開しており、木曜日の朝7時から「Morning Pitch(モーニングピッチ)」というイベントを開催しています。毎週5社のベンチャーが大企業の新規事業担当者や投資家らを前にプレゼンテーションを行うことで、イノベーションの創出につなげるのがねらいです。残念ながら新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のためオンライン開催となっていますが、いずれ会場(東京・大手町)でのライブ開催に戻す予定です。

 モーニングピッチでは毎回テーマを設定しており、それに沿ったベンチャーが登場します。ピッチで取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信する本連載。今回は小売業向けの先端技術「リテールテック」です。テーマ概観を説明するのは、DTVSでオープンイノベーションやエコシステムの分析などに携わっている羽渕麻美です。

 ユニコーンの1割占める

 リテールテック系のスタートアップは電子商取引(EC)や、倉庫保管からラストワンマイルの配送に至るサプライチェーン、商品とサービスの即時配信など6つの分野に分類され、その中から2020年も次々と新しい企業が誕生しています。

 2015年以降のリテールテックスタートアップを巡るお金の動きを見てみましょう。世界的な資金調達の動向は、事業が軌道に乗って安定成長している「レイターステージ」への投資にシフトしています。国別投資件数のシェアは、15年時点で米国が半分近くを占めていましたが、徐々にアジアが拡大し、19年には米国を上回りました。中国のスタートアップがアジア全体をけん引するという構図が鮮明になっています。

 また、2019年には、評価額が10億ドル以上で未上場のスタートアップを指すユニコーン企業が310社誕生しましたが、そのうちの1割に相当する31社がリテールテック系でした。さまざまな産業の中で注目領域となっています。

 OMOで顧客の接し方に変化

 次に「リテールテックはどのように変化していくのか」というテーマで、新しい概念を紹介します。キーワードは「OMO(Online Merges with Offline)」。オンラインとオフラインを融合させるマーケティングです。

 これまでオンラインからオフライン(実店舗)へ送客していましたが、OMOによって顧客との接し方は大きく変化していきます。企業目線による販売やサービスに代わって、顧客視点の考え方を取り入れているからです。そのための顧客接点の手法はオンラインが主流となり、オフラインは信頼を獲得するための手段となります。オンラインとオフラインとの接点ポイントは(1)広告メールなどテクノロジーによって量産可能なデジタル(2)店舗などで複数の顧客に同時に接する場所(3)顧客別に対応するリアル-という3つの条件が重要になります。

 無料配送で顧客接点を強める

 ここでOMOの事例を紹介します。中国の4大保険会社、平安保険が展開する「グッドドクター」というアプリでは、デジタル接点で健康食品の紹介などを行うほか、医師がオンラインで相談に乗ったり、実際の病院を紹介したりするといったサービスを提供しています。

 中国のアリババが運営する生鮮食品を中心としたスーパーマーケット「フーマーフレッシュ」では、宅配ECを展開しており、店舗から半径3キロ以内の地域には無料で30分以内に配送します。また、顧客が興味を抱き実店舗に足を運んでもらえるように、生け簀で泳いでいる魚をその場で調理してレストランで提供するなど、新しい形の業務を展開しています。

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