一色染めのつまらなさ
とは言え「好事魔多し」、良い状況に落とし穴は付き物です。やはり最近のPB商品で埋め尽くされつつあるコンビニの売り場を見ていますと、やり過ぎ感、強引さの気配が感じられ始めたように思えてなりません。その印象は新PBがスタートしたファミリーマートでも同様です。
ちょっと厳しい言い方かもしれませんが、「独善性」とか「強者・資本の理論」などというワードがどうしても頭によぎってしまうのです。圧倒的なバイイングパワーで供給者を「いつでも」「より安く」「やり自在に」選定できるコンビニ側にとっての都合の良さ。
マーケティング面・販促面でも、コンビニブランドにすべての価値が集まるので、それぞれの製品がパッケージ開発、広告販促を行っていたことに比べて圧倒的にお手軽です。製品パッケージ開発でさえ自社PBテンプレートにあてはめるだけでいくらでも製品化できてしまいます。実際にPB商品のパッケージは印刷手法的にもかなりお手軽・汎用的が通例です。
シンプルと言えば聞こえが良いですが、商品開発ともなればそれぞれ都度、精魂を込めた独自書体を開発し、通常の印刷で色味が出なければコストをかけてでも特色という独自色の印刷にこだわる心あるデザイナーからすれば卒倒しそうな代物だったりします。
やはり、あまりに無機質で単調な一色染めはコンビニの棚自体、お店自体の陳腐化につながるのではないでしょうか。実際に一足先にローソンが導入した新PBにネット上で賛否がわきあがった件では、基本的な視認性や判別性の悪さなどはマイナーチェンジで改善されつつあるようですが、PB自体が内包する強者の論理が図らずも生活者に伝わった部分もあったように思います。
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今のところ、ファミリーマート新PBではローソンPBでの批判をふまえたのか、商品内容の分かりやすさ、判別しやすさなどにはそれなりの気配りがされているように見受けられます。しかしながら、盛者必衰は世の理。それは流通業界の勝者たるコンビニ各社が一番知るところに違いありません。
例えば、最近ショッピングモールなどでは世界各国や珍しい地方産品などを扱うバラエティーショップが人気のようです。まだまだ数字的に競争するような状況ではないでしょうが、生活者は常に驚き、発見を製品・売り場に求めて飽き足らない存在であることもまた事実です。PBでそんな素朴な欲求に十分こたえられるのでしょうか。さらに言えば、今や競争相手は、ネット上にも多数存在するのです。
ブランドを人格で評価する手法がありますが、今までのコンビニは「とにかく熱心、一番身近な街一番の働き者」という好感度があったように思います。そこにあまりにも企業的、資本的論理。強者の論理は似合いません。ぜひそんなことも意識しながら、PB開発を行っていただきたいと思うのでした。
【ブランドウォッチング】は秋月涼佑さんが話題の商品の市場背景や開発意図について専門家の視点で解説する連載コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら