ブランドウォッチング

「ファミマよ、お前もか」 新プライベートブランド「ファミマル」推進の既視感

秋月涼佑
秋月涼佑

 自ブランドで生活者に独自のマーケティングを行い、名前を憶えてもらい購入消費してもらうことと、製造者としてのみの記載になり「指名買い」の価値を手放すことでは、事業者としてのイニシャチブ面で天国と地獄のような違いがあります。

 すでにこのメーカーとコンビニ本部とのせめぎ合いは、コンビニ業態の伸張に並行して営々と進行してきたこともまた事実です。年々、メーカーサイドは各コンビニブランド向け独自商品の開発を購買の条件として突きつけられてもきました。メーカーとしてみれば開発コストや製造コストを考えれば、全国一律商品を10年以上も定番として売ることが可能だった時代はまさに牧歌的な過去のものとなったわけです。

 ほとんどの場合結論は決まっています。コンビニの棚があるとないとで、販売額がまったく変わってくるゆえ背に腹は代えられない選択で、自社の定番ブランドに新フレーバーなどを開発し、1000本ノックのごとく各コンビニに独自商品を供給したものだけが棚を与えられる状況は、今となってはコンビニPB時代の前哨戦に過ぎなかったと言えるかもしれません。

 一方でさすがに自社ブランドに自信と思い入れがある大手メーカー各社は、コンビニPBのサプライヤーになることには大きな抵抗、戦いがあったと時折漏れ伝わってきたわけですが、もはやPBのサプライヤーとして軍門に下った事例は枚挙にいとまがない情勢です。

 と、メーカーの視点から見れば、切ない情景に違いないわけですが、それもこれもコンビニ各社に絶大な購買力=販売力あってのこと。つまり生活者の支持があるわけで、大義があることに疑いの余地はありません。実際にPB商品への熱い支持は、ネット上でも往々「コンビニPBの○○食べたら、優勝した」などとレビューネタの定番と化しているほどで、やはり売り場に近い、生活者に近いコンビニならではの生活者インサイトの発掘量や機動力で、メーカーの商品開発文法を良い意味で無視した痒いところに手が届くような商品や、美味しさの追求には高い評価があるように思います。

 また、定価販売の建前は崩してしまえば二度と後戻りできないルビコン川に違いなく、PBがバイイングパワーで得た低価格仕入れの果実を生活者に還元する装置となっていることも見逃せないところです。実際にコストパフォーマンス面の安心感がPBへの高い評価の土台となっています。つまり美点を言えば、競争と努力で、世界のコンビニ(KONBINI)という別格のレベルに成長した日本モデル一つの到達点がPBの確立と言えるかもしれないのです。

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