地方税収の大幅な減少が懸念されている
10月31日に投開票が行われた衆議院総選挙では、もっぱら「分配重視」を訴える候補者が多かったが、この「分配重視」の風潮も「公務員天国」を助長しそうなムードだ。公務員給与を大幅にカットすれば、その分、景気にマイナスになる、という理屈である。実際、県庁周辺の飲食店などは、県庁依存度が高く、新型コロナが明けて県庁職員の会食が戻ってくることへの期待が高い。県庁職員の報酬を削れば、こうした県庁職員の消費も戻らない、というわけである。
だが、そんなことは言っていられない事態が着々と進行している。地域経済が落ち込むことで、地方税収の大幅な減少が懸念されているからだ。一方で、新型コロナ対策など財政支出も大幅に増えており、財政悪化が深刻化している。
2020年度は新型コロナで企業活動が止まって経費が使われなかったためか、税収は国も地方も増加するという「予想外」の状況になった。国の税収に至ってはバブル崩壊後、過去最大となった。だが、これも時間の問題で、税収がジワジワと減れば、地方財政を保つためには行政改革を避けて通れなくなる。行政改革の際たるものが人事制度、つまり人件費の圧縮である。
働きに見合った報酬に変えていくことが必要
地域の民間企業従業員などの「公務員天国」への反発は根強いものがある。「格差の拡大」が叫ばれるなか、国政では「金融所得などが大きい富裕層」と一般庶民の差を前提に議論されているが、地方ではそうした富裕層が相対的に少ないこともあり、「格差」と言えば、「官民格差」がまっ先に目に付く。
ちなみに、公務員天国と言うと、「国を守っている自衛隊員や消防職員は薄給に耐えて頑張っているのに給与を下げろというのか」といきりたつ人がいる。ここでいう公務員は国ならば霞が関の官庁にいる大卒の幹部になっていくキャリア官僚たち、県庁も同様の総合職の人たちである。こうした職員たちの報酬は、税収の中から捻出していかなければならないから、いくら大事な仕事だからと言って大盤振る舞いに給与を上げていくことはできない。むしろ、働きに見合った報酬に変えていくこと、まさに行政改革が必要なのだ。
地方の人口減少は深刻、これから納税者は激減する
公務員の給与は、俸給表に従って、基本的に毎年少しずつ上がっていく。月給据え置きと言ってもこれは全体平均の話で、個人個人は昇進していくから俸給表の位置づけが上がる人が多い。これは業務の成果というよりも、勤続年数で決まっていく。基本的に俸給表での級号が下がることはないから、定年まで上昇していく。ここが民間との一番の違いだろう。
最近の民間企業は50歳くらいで年収のピークを迎え、その後は役員にでもならなければ給与は増えないという会社も少なくない。働きに応じた年俸制が取り入れられている会社も増えた。高度経済成長期ならいざしらず、人件費が年々膨らんでいく仕組みには、民間は耐えられないわけだ。
県庁も改革派の知事が就任すると、人事制度改革に乗り出す。なかなか職員の本給には手をつけられないから、職員の採用を抑えたり、非常勤職員で補って、全体の人件費を抑えようとしている。だが、それも今のままでは限界を迎えるところが多い。なぜなら、地方ほど人口減少が深刻で、10年後の納税者が激減することが分かっている県がほとんどなのだ。職員の人件費の重さが納税者の目に明らかになれば、早晩、大リストラをせざるを得なくなる。