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「左翼思想は古い」はもう古い? 日本は欧州左派インテリとのパイプを

安西洋之
安西洋之

 1989年の冷戦の終結は、こうした2つの流れを一気に片方に寄せた。それとともに新自由主義や米国型資本主義の勢いが増していった。

 もともと共産主義だけが左翼ではなく、19世紀のヨーロッパからあった社会主義の一つとしてマルクスによる共産主義があったはずだが、1989年を境にこの思想と「安心して」関係を断ったのが、日本のインテリだったのだろう。また政治の世界における中道を含む左派政党の凋落も著しい。

 このように、1990年代以降、日本の政財界およびアカデミズムは米国一辺倒に近い。お隣の中国は共産主義政党が資本主義を取り入れ、その変形ぶりで大きな勢いを得ようと、日本の人たちは「世界における左翼思想のありようをフォローする価値がない」と考えてきた節がある。

 対してヨーロッパにおいては左翼的思想が綿々と継続している。ヨーロッパと米国を大きく分ける特徴は何かといえば、共産主義がメインストリームに近づいた経験の有無である。ヨーロッパにはあり、米国にはない。その伝統が続いている。

 それが赤川編集委員の解説にあるように、今、環境問題や人権問題がクローズアップされてきているなか、日本の政党はヨーロッパの左翼政党とのネットワークが欠けているため、これらの問題に対する考え方を洗練させる機会に乏しい、との事態に直面しているのだ。 

 赤川編集委員は「ドイツの政党に動きを見る限り、環境問題は左右関係なくカバーする領域とみなされてきているが、人権問題は左翼政党の強みとするところ」と話している。

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