■スポーツカーは自動車会社の魂であり存在証明
そんな時代に、いやそんな時代だからこその新型「フェアレディZ」登場です。
言うまでもなく日産自動車については色々あったわけです。というかすでに日産自動車という会社は1999年に経営が傾き、ルノーが資本参入した時点ですでに色々あった会社だったのかもしれませんが、まさに今こそ正念場、激しく毀損されたコーポレートブランドのイメージをまたもや建て直さなければならないことは言うまでもありません。
8月18日にニューヨークで正式に発表された7代目日産「Z」(日本名「フェアレディZ」)。すでに昨年9月に発表されていた「フェアレディZ プロトタイプ」ほとんどそのままに仕上げられた市販仕様のフォルムは、開発陣の並々ならぬ意気込みとこだわりを感じるところです。
先代の6代目「フェアレディZ」は2008年発売、それからかなりの期間を経過していることもまた事実です。それでなくてもSUV全盛時代に、スポーツカーや2ドアクーペの立場はかなり厳しい状態です。モデル末期とは言え販売台数は月間100台を切る状態と言われていましたし、ゴーン時代後期には正直放置状態と言わざるを得ない印象がありました。確かに、経済合理性を考えれば開発などできる状態ではなかったに違いありません。ホンダの2代目NSXも終売が発表されましたが、「Z」の販売終了を危惧したファンも多かったわけです。
ゆえに実際には6代目の型式、プラットフォームを残しての工夫があったようですが、やはりデザイン含めての新車としての発表はクルマ好きにとって朗報であることには違いありません。
それにしても、ゴーン体制が終わって早々昨年9月には「フェアレディZ プロトタイプ」を発表したことからも日産ブランドへの強い危機感は鮮明でした。やはり、メーカーにとってはその製品こそが何よりのステートメントです。実際にかつて日産の象徴である「Z」と「GT-R」のニューモデルを着任早い段階で発表したのは他ならぬカルロス・ゴーン氏自身でした。
「仏作って魂入れず」という言葉がありますが、やはり「ハシリ」こそ自動車の魂。これは快楽主義者の不道徳で自己本位の自己満足まして虚栄心ではなく、最も良く走るクルマが、最も安全で効率的な自動車の機能を追求したものであることはどんな時代も変わらないのです。
自動車というプロダクトのレゾンデートル、存在証明として、ハイファッションブランドにとって実売の中心ラインナップと別にコレクション、ショーモデルが不可欠であるようにスポーツカーは自動車会社にとって常に核心的な製品であることは間違いないのです。