企業のディレクターを務めていた父親は1970年代から中国に出張していたビジネスパーソンで「できるだけ旅をするように」と子どもたちに教えた。旅は頭の体操になり、もちろん外国語を学べる機会でもある。そして多くの言語を知れば知るほど、それだけサバイバル能力は高まる。
というのも、エリザベッタ自身はミラノで生まれ育ったが、両親はスロヴェニアと国境を接するゴリッツィアとトリエステの出身だ。祖父母の世代だとイタリア語だけでなくドイツ語やスロヴェニア語も話す。カトリック、ユダヤ教、ギリシャ正教とそれぞれの宗教と文化の影響を強く受けた地域で、トリエステは長年に渡り重要な港であり続けている。
「両親とも異文化に対して敏感だった」とエリザベッタは話す。
エリザベッタは高校時代、毎夏、英国のロンドンに滞在し英語とその文化を学んだ。アフタヌーンティーや劇場でのコンサートの場での振る舞いの文化コードの所在を理解するようになったのである。これが何十年かを経た現在、大学でビジネスエチケットを講義することに繋がっている。
実のところ、ぼくはエチケットやマナーに関する教育について半信半疑のところがある。必要なアイテムであると認めながらも、往々にしてそれらが「この文化での振る舞いはこうあらねばならない」という静的文化理解に留まる可能性が高いからだ。
しかし、エリザベッタのラグジュアリーに関する意見を聞いて、ぼくも気がついたことがある。