ブランドウォッチング

ブラウン 「機能主義」という説得力の方程式

秋月涼佑
秋月涼佑

■ブラウンならではのテスティモニアル(実証)広告

 それにしても、電気製品大国日本でその独自のポジションがファンに受け入れられてきたことはやはり一筋縄ではありません。

 日本市場におけるブラウンのマーケティングで真っ先に思い出すのは、何と言っても「ブラウン、モーニングレポート」。そう朝のシェービングルーチンをすでに済ませたはずのビジネスマンに駅や空港で、シェーバーを試してもらい、いやいやもう髭剃り済ませましたという方が、怪訝そうに試すと意外なほどに髭がそれるのでビックリするというあのCMです。電動歯ブラシでも同じフォーマットが使われましたので、覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

 もちろん、グローバル企業ですからこの広告フォーマットは日本独自のものではありません。こういった実証実験型のCMを「テスティモニアル(testimonial)」と呼びますが、どちらかというと日本の企業よりもグローバルマーケティング企業が好む手法ではあります。

 それにしても、あらためて見てみますと、ブラウンという機能主義を標榜するブランドに実証実験広告、非常に整合性が高い組み合わせであることにも驚きますし、またその手法を飽きられることを恐れず営々と続ける一貫性はやはり日本企業とは異質の文化であることも感じさせるのです。

 ドイツ的な製品の代表と感じるブラウンも、今や米生活用品コングロマリットP&G傘下です。そもそもジレット傘下だったブラウンが、2005年にジレットごとP&G傘下に入ったということですが、グローバル化する株式資本市場を前提に意外なブランドが意外な資本傘下にいることは、今や珍しいことではなくなりつつあります。だからこそブランドのアイデンティティをより明確にすることも同時に求められますので、いかにもドイツ機能主義を感じさせる個性は今のところ保たれていますし、今後も大事にされるのではないでしょうか。

 逆に言えば、ブランドアイデンティティがしっかりしている個性的なブランドや独自のデザイン言語を持つ企業だけが国際的な資本市場で価値を見出されるということでもあろうかと思います。

(過去記事)「高級チョコ「ゴディバ」の定石破り コンビニでも売るプレミアムは成立するか」

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