縮小均衡することなく、大手のメディア企業としての生き残りを図るのであれば、ネットでのプラットフォームを確立しかもそれを英語圏を視野に入れて実現することが不可欠な企業戦略に違いないのです。
今回の講談社のブランディングは、まさに英語圏をはじめとするグローバルのマーケットを視野に入れたものです。新ロゴの書体は手書きを感じさせる繊細なもので、普遍的な知的さを感じさせます。
クリエイティブとは不思議なもので、同じ文字を図案化しても、制作者の国籍や文化的バックグラウンドなど必ず反映してしまうものです。そういう意味で、日本人が英語市場を中心にするグローバル市場向けのデザインを想像でストライクゾーンに投げ入れることは現実には難しいのも事実です。海外チームと作りあげた今回のブランディングのアプローチはまさに目的に対して整合的で、さすがに「分かってらっしゃる」と感じる部分です。
逆に言えばこれからの講談社自身が真に世界に自らのコンテンツを発信するためには、ただの翻訳的な発想を超えた、出発点からグローバルなバックグラウンドを体感理解している編集者やクリエイターの養成が不可欠ということだとも思います。それは言うほど生易しいこととは思えませんが、創業家出身の若き社長がリーダーシップをとった新ブランディングに、まざまざとその志が表現されていることは間違いないように思います。
ぜひ日本を代表するメディア大手の一角、講談社にこそ、世界に日本のコンテンツここにありという発信を期待したいと思います。
【ブランドウォッチング】は秋月涼佑さんが話題の商品の市場背景や開発意図について専門家の視点で解説する連載コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら