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講談社の“本気” 新ロゴをニューヨークで開発した理由とは

秋月涼佑
秋月涼佑

 さらには、豊かで人口密度の高い生活者集団が、広告モデルを最大限機能させ、ますます産業としてのメディアの存立を強固なものにもしました。結果、日本の有力メディア企業はどんどん大手化し、大きな予算で世界有数のコンテンツ制作開発能力を磨き、一方の生活者もその豊穣を享受する幸福な関係を築いてきたのです。

■1億人と10億人の市場がもつ決定的な差

 この日本ならではの事情は雑誌・書籍においても例外ではなく、どの街でも読者が手軽に手を伸ばせる書店網とそれを支える配本流通が整備され、それに加えて大都市ではかつては駅売店、今やコンビニエンスストアも含めて手厚く売り場が提供されてきました。

 ですが、まさにネットがそのパラダイムを大きく変えようとしています。もはやすべてのコンテンツはネット経由で供給することが可能な時代となりました。

 こうなってくると、日本のメディア企業の広告モデルにしても、悪いシナリオを考えれば、グローバルなプラットフォーマーの第2階層(ティア2)に押し込められ、今までのような価格決定権を維持できず、低収益を甘受せざるを得ない未来も十分起こりえます。実際に、すでにネット上での広告モデルプラットフォーム生態系の最上位には間違いなくGoogleやFacebook、Twitterなどが君臨し大きな影響力を行使するようになりました。

 かつてのように日本の巨大メディア企業と広告代理店が、国内メディアの広告枠を独占販売してきた状況はすでに過去のものとなりつつあるのです。

 また、日本の生活者にとっては、究極この状況を突き詰めていけばデジタル植民地的なメディア環境さえ考えられます。要は多くのメディア接触が、Google、YouTube、Netflix、Amazon、ディズニーなどグローバルプレイヤーのプラットフォームを通じてなされる時代が現実になるかもしれないのです。

 英語圏の人口は約10億人、今後人口減が予測される実質日本だけの日本語圏は1億人を加速度的に割り込みますが、メディアコンテンツ企業にとって相手にする市場規模が決定的な意味をもつことは自明です。

■世界に日本のコンテンツここにありと示して欲しい

 足元は「鬼滅の刃」などマンガ作品の大ヒットもあり、現象傾向に歯止めがかかったかに見える雑誌・書籍市場ですが、リアルな印刷物としての市場の先行きはネットコンテンツとの可処分所得の取り合いも考えれば楽観を許さないのは当然と言えます。

 そもそも、印刷・製本・配本に係る原価費用が高額な雑誌・書籍は本来的に贅沢なメディアです。筆者などはその贅沢さゆえどんなに同じ内容をデジタルメディアで読める時代にあっても、手に取って読める価値観やグラビア写真の迫力で生き残るのではないかと考えていますが、一方で出版社にとってさえネット配信の収益化は経営戦略上避けて通れない課題ですし、ネットの制作・配信コストの相対的な安さはチャンスであることも間違いありません。

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